使ってみようESRシリーズⅢ マイクロ波の調整法
ER060006
ESRで測定できる試料は大変広範囲に亘ります。実際にそれぞれの試料を測定する場合、具体的にどのようにすれば情報が得られるのか分からないケースがあると思われます。本シリーズの3回目は測定結果の質を左右するマイクロ波の調整法です。
試料を共振器(キャビティ)にセットする前に、Q-Dipを表示します。FAシリーズではQ-Dip ウィンドウを開き、TEシリーズではSHF画面を表示します。その他の装置では、組み込まれているオシロスコープに注目します。ここでは各装置で共通のQ-Dip 部分を示して説明します。FA,TEシリーズでは画面上の、その他の装置ではマイクロ波ユニット上のMOD ボタンを押して、MOD-ONの状態にします。次にキャビティに試料をセットします。必ずこの手順で試料をセットしてください。
- 約1mWのマイクロ波パワーを投入します。図のような曲線が表示されます。
- REFボタンを押してREF-OFFの状態にし、周波数を変えてQ-Dipの下端を画面中心に表示させます。更にCoupling を変更してDip 先端が深くなるように調整します。
- REFをONにします。Dip 形状が歪みます。
- PHASE を変更してDip の下端を画面中央に移動させます。
- AFC をON にします。輝点を残してDipは消え、AFC メーターがアクティブになります。AFCメーターは、FAシリーズではQ-Dip画面の右下に、TEシリーズでは操作パネル手前に、その他の装置ではマイクロ波ユニットにあります。
- 一旦パワーを0mW にします。この時のAFC メーター上のDetector Current(DET CURRENT)の目盛を覚えておきます。この値は試料および装置によって多少異なります。下図はFAシリースのAFCメーター部です。
- 少しづつパワーを上げていきます。Phase, Detector Current の表示が変化しますのでそのつどPhaseとCoupling を操作して変更し、Phaseは最小に、DET CURRENTの表示は0mWの時と同等に保ちます。 多少の変動は差し支えありません。下図はFAシリーズのAFCメーター部の例です。
- 徐々にパワーを上げて、200mWまでDETCURRENTの表示が変化しないよう(Phase は0)に調整します。この状態が、最も高感度に測定ができるジャストカップリングです。調整途中で各メーターが振り切れないよう(FA,TEシリーズでは赤のインジケーターが点灯しないよう)注意して、調整してください。
マイクロ波調整後は、ただちにパワーを下げます。特に、試料の交換は必ずパワーを1mW以下に下げてから行ってください。通常の測定では、50~60mW程度までで表示が変化しなければ測定できるでしょう。
試料によっては②の段階でQ-Dip が得られない場合があります。また、Q-Dip は得られてもマイクロ波パワーを投入するに従いDET CURRENT が大きく変動するため、数10mWでも安定しない場合があります。このような場合は、マイクロ波ロスの大きい試料の可能性がありますので、Application Note ER-060004を参照して、試料管や試料の採取量を再検討してください。