材料のESR−プラスチックの熱による劣化評価 ① −
ER160008
プラスチックなどの高分子材料は、さまざまな機械部品や免震ゴムなどの構造部材に使われており、その材料自体の性能の要求も多様化し、長期利用も望まれているため、劣化特性の評価が必要とされます。プラスチックの劣化は、その成形加工や使用などで、温度、応力、酸素、水、紫外線などの数々の要因が関係して、促進されます。今回は、プラスチックの熱劣化についてご紹介いたします。試料はアクリル樹脂(図1)を用いました。プラスチックを室温から400℃まで加熱すると230℃付近から熱の負荷によるESR信号強度の増加がみられました(図2)。図3は、230℃のときのESR信号の面積を1として、各温度の信号の面積比からESR信号の変化を示しています。300℃以上ではESR信号が顕著に増大しており、熱分解反応が急激に進行していることがわかります。


図2.加熱によるESR信号の変化

図3.加熱によるESR信号の面積の変化
図4は、各加熱温度でのg値を示しています。加熱温度が上がるとともに、g値が2.0041から低下していることがわかります。試料を400℃まで加熱した後、約40分かけて室温に戻して再度測定すると、g値は2.0030に変化していました(図4)。これは試料が高温になることにより、酸化防止剤が枯渇すると共に、炭素鎖が次々と切断しながら劣化が進行し、炭素中心ラジカル(g=2.0030)が増加している様子を示しています。

図4.加熱によるESR信号のg値の変化
ESRで、わかること
- 耐熱性
- ラジカル種
- 劣化の速度・度合(ラジカル量)