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広い線幅のESR信号を測定する際の注意 - 銅-ゼオライトを例に -

ER180004

ESRは、形状を問わず様々な常磁性物質(ラジカル、金属イオン、欠陥等)を計測することができます。そのスペクトルは試料により多様なため、特に測定者が初めて扱う試料を測定する場合には、条件を設定する際に注意が必要です。詳細は成書1-2)や、弊社HPのアプリケーションノート3) をご参考にしてください。ここでは比較的線幅の広い信号を測定する際の、掃引幅の設定について注意点を説明します。

試料とESR測定条件

試料 銅イオン担持ゼオライト
ESR測定条件 マイクロ波周波数;9443MHz, 中心磁場;303.6mT,
変調磁場;100kHz, 0.2mT, マイクロ波出力; 1mW,
掃引時間;4min, 測定温度; RT
掃引幅を±50~150mT の範囲で変更

結果

図1 に、掃引幅±50mT の結果を示しました。大きな信号が得られていますが、スペクトルの両端が同じ高さになっていないことが分かります。このように、信号がベースラインレベルまで戻っていない場合は、スペクトルの全体像が得られていないことになり、正しい解析ができません。
図1 ±50mT の掃引結果
図1 ±50mT の掃引結果

図2 に、掃引幅±75mT の結果を示しました。スペクトルの両端は、かなりベースラインに戻っているように見えますが、よく観察するとやはり高さが異なることが分かります。
図2 ±75mT の掃引結果
図2 ±75mT の掃引結果

図3 に、掃引幅±100mT の結果を示しました。この場合は、両端がほぼベースラインまで戻っていることが示されました。
図3 ±100mT の掃引結果
図3 ±100mT の掃引結果

図4 に、±150mTの結果を示し、試料由来の信号領域を二回積分しました。このスペクトルを元に、図1~3 の掃引幅の全域を信号領域とみなして、それぞれを二回積分して得られた面積を下表に比較しました。±150mTでの結果を100%として表示しました。

図4 ±150mT の掃引結果  二回積分

測定掃引幅による面積値の比較

掃引幅(± mT) 50 75 100 150
二回積分面積比(%) 86 96 100 100
掃引幅全域で二回積分
±150mT のみ積分領域は207mT

このように、目視ではスペクトルの端がわずかに切れている程度と感じられるケースでも、スペクトル全体を観測した場合と比較してあきらかに定量値が異なることが示されました。正確な定量を行うためには、スペクトルの両側に充分なベースライン領域が得られていることが必要ですので、掃引幅は広めに設定する方が確実です。

まとめ

正しくESRスペクトルを測定するためには、適切な掃引幅を設定することが重要です。適切な掃引幅は試料に依存しますので、初めて測定する試料の場合は何通りかの掃引幅でスペクトルを測定して、確認することをお勧めします。

参考文献

  • 実用ESR入門 −生命科学へのアプローチ:石津和彦 編、講談社サイエンティフィク 1981年
  • 電子スピン共鳴 素材のミクロキャラクタリゼーション:大矢博昭・山内淳/著、講談社サイエンティフィク 1989年
  • 使ってみようESRシリーズ:弊社HP アプリケーションノート ER060004~ER07001
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