強磁性薄膜とスピン流 (4) - 逆スピンホール効果のパワー依存測定 -
ER190005
強磁性共鳴(FMR)による強磁性体からのスピンポンピング作用を利用した電圧スペクトルの線型は、式(1)に示す、純スピン流の逆スピンホール効果による起電力 (VISHE) と強磁性体由来の異常ホール効果による起電力 (VAHE) の二つの成分の重ねあわせになることが知られている[1]。
特に、異常ホール効果の成分は、試料の特性やFMRに使用する高周波の電場成分の影響の仕方により現れ方に変化が生じる。そのため、得られる電圧スペクトルから純スピン流の効果を評価する場合は、式(1)による線型解析によって成分分離を行うことが必要となる。
試料と方法
アプリケーションノート[ER190002] にて使用したのと同じ、NiFe合金 (Py) とPdの2層膜を試料として、Pd箔両端の起電力 (Vemf)) とFMRスペクトルを照射マイクロ波パワーを変化させて同時測定した。
FMRと逆スピンホール効果 (VISHE) のマイクロ波パワー依存性
図1のVobs.は、実験により得られたVemfスペクトルである。スペクトル波形は磁場変調法により微分型を示すため、これを積分型に変換した後、式(1)によるフィッティング処理をして、VISHEとVAHE 成分を分離した。
図2に示すように、FMRスペクトル{図2(a)}とVISHEスペクトル{図2(b)}の強度は、FMRではマイクロ波パワーの平方根に、VISHEはマイクロ波パワーにそれぞれ比例するという特徴を持つ[2]。

図1 逆スピンホール効果の線型解析例


参考文献
[1] E. Saitoh, M. Ueda, H. Miyajima and G. Tatara, Appl. Phys. Let. 88(2006), 182509.
[2] K. Ando, S. Takahashi, J. Ieda, Y. Kajiwara, H. Nakayama, T. Yoshino, K. Harii, Y. Fujikawa, M. Matsuo, S. Maekawa, and E. Saitoh, J. Appl. Phys. 109(2011), 103913.
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