低真空SEMによる餅表面の異物観察/分析
MP180325-02
餅に付着した黒い異物 ①
図1 餅表面の黒い粒状異物

餅に付着した黒い粒状異物を低真空SEMで観察し(図2)、EDS分析を行いました。粒状異物の中央付近を分析すると、FeとOが多く検出されました(図3)。FeとOが主成分で且つ黒い粒子であることから、脱酸素剤の酸化鉄だろうと予想しました。
そこで、餅の袋に入っていた脱酸素剤を取り出し、異物と同様に観察(図4)、分析(図5)を行いました。脱酸素剤のスペクトルと異物のスペクトルがほぼ一致したことから、この餅に付着した黒い異物は「脱酸素剤由来である可能性が高い」といえます。
図2 黒い粒状異物を低真空SEMで観察

加速電圧:7 kV 撮影倍率:x100 真空度:30Pa
図3 黒い粒状異物のEDS元素分析結果

加速電圧:15 kV
図4 脱酸素剤のSEM観察結果

加速電圧:7 kV 撮影倍率:x500 真空度:30Pa
図5 脱酸素剤のEDS元素分析結果

加速電圧:15 kV
異物のスペクトルと比較すると、ほぼ一致しました
これらの結果から、この黒い異物は「脱酸素剤由来の可能性が高い」ということが分かりました。
餅に付着した黒い異物 ②
図6 餅表面の黒いシミ状の異物

餅表面の黒いシミ状の異物(図6)を低真空SEMで観察しました(図7、8)。光学顕微鏡で観察することができなかったカビの胞子を、SEMにより鮮明に観察することができました。
通常、カビは培養して光顕で確認する方法(図9)が一般的ですが、低真空SEMを使用することで、このように小さい段階で、カビの胞子を直接確認できる場合があります。
図7 黒いシミ状異物を低真空SEMで観察

加速電圧15kV 撮影倍率x250 真空度47Pa
観察結果から、黒いシミのように見えた異物はカビであることが分かりました。
餅表面のカビ
餅表面で成長させたカビを観察しました。図8は光学顕微鏡像で、成長したカビを観察したものです。図9は、同じカビの低真空SEM画像です。無処理でも胞子が明確に観察できました。
図8 成長したカビ(光顕像)

図9 成長したカビ(SEM像)

試料:餅表面のカビ
加速電圧:15 kV 撮影倍率:x800 真空度:50Pa
低真空SEMによる食品の観察法については アプリケーションノート MP180325-01 参照
- このページの印刷用PDFはこちら。
クリックすると別ウィンドウが開きます。
PDF 4.14 MB