感度の高いスペクトルを得るためのくり返し時間 ~最大効率測定
NM130016
⼀定の測定時間(マシンタイム)が与えられたとき、最も⾼い感度で信号を得るにはどうすればよいでしょう?くり返し時間RDを縦緩和時間 T1 の3~5倍に設定する?それは定量NMR測定の条件です。90°パルスなどによって信号取得を横磁化からスタートさせるパルスシーケンスでは、単位時間あたりに得られるS/Nは次式で与えられます。


この式をグラフ化すると左図のようになり、くり返し時間RDをT1の約1.3倍に設定したとき、最も効率よく信号が得られることが分かります。これに対して、くり返し時間を⻑くしすぎると、⼀定測定時間あたりに実⾏できる積算回数が減少し、単位時間あたりのS/Nは減少します。逆にくり返し時間を短くしすぎると、くり返し時間の間に回復する縦磁化が不⼗分になり、やはりS/Nが減少します。
下図はスクロース(T1(1H) = 50s)に対して⼀定の測定時間2,400sで測定した13C CPMAS スペクトルです。RD=60sで最⼤効率測定が実現されています。

参考文献
- T. D. W. Claridge, “High-Resolution NMR Techniques in Organic Chemistry”, Second Ed., Elsevier, 2009, pp99-102.
- T. Nakai, New Glass, 28(2), 17-28 (2013).