JASONの化学シフト予測機能を使おう! -化学シフト予測による解析結果の確認(3)-
NM230002
NMRによる構造解析の結果は、様々な測定データの情報で総合的に判断する必要があります。近年はソフトウェアによる化学シフト予測の進歩が目覚ましく、測定結果と併せて利用することで、解析の確度を向上させることができます。ここでは、JASON*による化学シフト予測の活用例をご紹介します。(JASON:JEOL Analytical Software Network)
JASONの化学シフト予測機能による推定構造の確認
分子式がC6H6N2O化合物の解析例をご紹介します。この化合物は基本的な測定法(1H, 13C, DEPT, 1H–13C HSQC, 1H–1H COSY, 1H–13C HMBC)と1H–15N HMBCを解析することで、推定構造を導き出すことができます(Fig. 1)。推定構造の妥当性を確認する方法として、化学シフト値の加成性の利用がありますが、これはソフトウェアによる化学シフト予測機能で代用できます。Fig. 1の推定構造にJASONの化学シフト予測を適用しました。実測値と予測値をTable. 1に示します。実測値と予測値がほぼ一致していることから、得られた推定構造は正しい構造と考えられます。

Fig. 1 推定構造

Table. 1 13C化学シフトの実測値と予測値(ppm)
化学シフト予測を利用するときの注意
しかし、化学シフト予測の結果を注意深く見ると、DとEの帰属が逆転していることが分かります(Fig. 2)。このような場合は、スペクトルに戻り、解析結果を確認します。COSYスペクトル(Fig. 3)で、E/AとC/A相関が観測されたことから、C-A-Eという1H配列があることが分かります。このことから、化学シフト予測が示すAとDが隣り合う構造は正しくありません。この例の様に化学シフト予測は、スペクトル解析を行った上で利用する必要があります。結果に矛盾が生じた場合は、解析結果を再確認することが重要です。

Fig. 2 ペクトル解析と化学シフトによる帰属

Fig. 3 1H–1H COSYスペクトル