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JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 窒素キャリアガスにおける感度確認③-CIイオン源 [GC-TOFMS Application]

MSTips No. 376

はじめに

世界的なヘリウムガスの供給不足に伴い、GC-MSキャリアガスにおいても代替ガスの需要が高まっている。窒素ガスは入手のし易さと安全性の高さにより最も有力な選択肢となるが、MSイオン源で生成される窒素イオンの影響により感度低下を引き起こすことが知られている。そこで今回JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaにおける窒素キャリアガスの影響について確認したので、MSTips No. 374~376にわたり報告する。本報ではJMS-T2000GC AccuTOF™ GC-AlphaのCI (Chemical Ionization) イオン源での結果について報告する。

実験

Table 1に本実験の測定条件の詳細を示す。正イオンCI (以下CI+) 法ではベンゾフェノン100pg/μLを1μL注入した。負イオンCI (以下CI-) 法ではOFN (オクタフルオロナフタレン) 10pg/μLを1μL注入した。キャリアガスはヘリウムと窒素を使用し、S/N感度、分子イオンにおける質量精度 (誤差) について比較を行った。キャリアガス流量はそれぞれのキャリアガスの最適線速度を踏まえてヘリウム1.0mL/min、窒素0.6mL/minに設定した。

Table 1 Measurement condition

GC : 8890GC (Agilent Technologies, Inc.)
Injection volume 1 μL
Mode Splitless
Column DB-5MS UI
(Agilent Technologies, Inc.)
30m x 0.25mm, 0.25μm
Oven temperature 50°C (1min) - 40°C/min
-250°C (2min)
Carrier flow He : 1.0 mL/min
N2 : 0.6 mL/min
TOFMS : JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha
Ion source CI ion source
Ionization ①CI+, ②CI-
CI reaction gas Methane
Ionization energy
(filament current)
200eV (300μA)
Mass Range m/z 100-500
Detector voltage 2500V

結果① CI+法

Figure 1にCI+法におけるベンゾフェノン測定結果の抽出イオンクロマトグラム (m/z 183.08±0.02)を示す。 S/N感度は窒素で1/2程度の低下に留まった。ソフトイオン化であるCI法では窒素がイオン化されづらいため、感度低下が抑制されたと考えられる。

Figure 1. EICs of benzophenone (CI+ method)

Figure 1. EICs of benzophenone (CI+ method)

Figure 2にCI+法におけるベンゾフェノン測定結果のマススペクトルを示す。プロトン付加イオン[M+H]+(m/z 183.0804) が強く観測されており、その質量誤差はいずれも誤差1mDa以下と良好であった。

Figure 2. Mass spectra of benzophenone (CI+ method)

Figure 2. Mass spectra of benzophenone (CI+ method)

結果② CI-法

Figure 3にCI-法におけるOFN測定結果の抽出イオンクロマトグラム (m/z 271.99±0.02) を示す。S/N感度はヘリウムに対し窒素で2倍程度の向上が見られた。ソフトイオン化であるCI-法では窒素がイオン化されづらいことに加え、反応ガス不純物由来の夾雑イオンの生成が抑制されたことが感度向上につながったと考えられる。

Figure 3. EICs of OFN (CI- method)

Figure 3. EICs of OFN (CI- method)

Figure 4にCI-法におけるOFN測定結果のマススペクトルを示す。分子イオンM-・(m/z 271.9878)における質量精度についてはいずれも誤差1mDa以下と良好であった。

Figure 4. Mass spectra of OFN (CI- method)

Figure 4. Mass spectra of OFN (CI- method)

まとめ

JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-AlphaのCIイオン源における窒素キャリアの影響について検証を行った。
CI+法では感度が1/2程度に低下した。CI-法では感度低下は見られなかった。質量精度についてはCI+法、CI-法とも誤差1mDa以下と良好であった

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