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JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 窒素キャリアガスにおける感度確認①-EI/PIイオン源 [GC-TOFMS Application]

MSTips No. 374

はじめに

世界的なヘリウムガスの供給不足に伴い、GC-MSキャリアガスにおいても代替ガスの需要が高まっている。窒素ガスは入手のし易さと安全性の高さにより最も有力な選択肢となるが、MSイオン源で生成される窒素イオンの影響により感度低下を引き起こすことが知られている。そこで今回JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaにおける窒素キャリアガスの影響について確認したので、MSTips No. 374~376にわたり報告する。本報ではJMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaの特徴であるマルチイオン化イオン源のひとつ、EI (Electron Ionization) /PI (Photo Ionization) 共用イオン源での結果について報告する。

実験

Table 1に本実験の測定条件の詳細を示す。EI法ではOFN (オクタフルオロナフタレン) 100pg/μLを1μL注入した。PI法ではベンゾフェノン10ng/μLを1μL注入した。キャリアガスはヘリウムと窒素を使用し、S/N感度、ライブラリースペクトルとの類似度 (M.F.)、分子イオンにおける質量精度 (誤差) について比較を行った。キャリアガス流量はそれぞれのキャリアガスの最適線速度を踏まえてヘリウム1.0mL/min、窒素0.55mL/minに設定した。EI法におけるイオン化エネルギーについては一般的な70eVのほか、窒素のイオン化抑制を期待できる20eVでも測定を行った。

Table 1 Measurement condition

GC : 8890GC (Agilent Technologies, Inc.)
Injection volume 1 μL
Mode Splitless
Column DB-5MS UI
(Agilent Technologies, Inc.)
30m x 0.25mm, 0.25μm
Oven temperature 40°C (1min) - 30°C/min
-250°C (2min)
Carrier flow He : 1.0 mL/min
N2 : 0.55 mL/min
TOFMS : JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha
Ion source EI/PI combination ion source
Ionization ①EI, ②PI
EI Ionization energy
(filament current)
70eV (300μA), 20eV (200μA)
Mass Range m/z 35-600
Detector voltage ①2600V, ②2800V

結果① EI法

Figure 1にEI法におけるOFN測定結果の抽出イオンクロマトグラム (m/z 272.98±0.10)を示す。 S/N感度は窒素(70eV)で1/30程度と大きく低下した。窒素(20eV)では1/3程度の低下に留まり、イオン化エネルギーの変更による感度低下の抑制効果が確認できた。

Figure 1. EICs of OFN (EI method)

Figure 1. EICs of OFN (EI method)

Figure 2にEI法におけるOFN測定結果のマススペクトルを示す。ライブラリースペクトルとの類似度 (M.F.) はヘリウム (70eV) と窒素 (70eV) では800以上と良好であった。窒素(20eV)では760程度とわずかに低下した。これはイオン化エネルギーを下げたことでフラグメントが抑制され、スペクトルが変化したためと考えられる。分子イオンM+・(m/z 271.9867)における質量誤差はいずれも1mDa以下と良好であった。

Figure 2. Mass spectra of OFN (EI method)

Figure 2. Mass spectra of OFN (EI method)

結果② PI法

Figure 3にPI法におけるベンゾフェノン測定結果の抽出イオンクロマトグラム (m/z 182.07±0.10) を示す。S/N感度は1/3程度に低下した。ソフトイオン化であるPI法では窒素はほとんどイオン化されないが、大量の窒素分子の影響と推測される若干の感度低下が見られた。

Figure 3. EICs of benzophenone (PI method)

Figure 3. EICs of benzophenone (PI method)

Figure 4にPI法におけるベンゾフェノン測定結果のマススペクトルを示す。分子イオンM+・(m/z 182.0726)における質量誤差はいずれも1mDa以下と良好であった。

Figure 4. Mass spectra of benzophenone (PI method)

Figure 4. Mass spectra of benzophenone (PI method)

まとめ

JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-AlphaのEI/PI共用イオン源における窒素キャリアの影響について検証を行った。EI法では感度が1/30程度と大きく低下したが、イオン化エネルギーを変更することである程度抑制できることが確認できた。PI法では感度が1/3程度に低下した。質量精度についてはEI法、PI法ともに誤差1mDa以下と良好であった。

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