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JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 窒素キャリアガスにおける感度確認②-EI/FIイオン源 [GC-TOFMS Application]

MSTips No. 375

はじめに

世界的なヘリウムガスの供給不足に伴い、GC-MSキャリアガスにおいても代替ガスの需要が高まっている。窒素ガスは入手のし易さと安全性の高さにより最も有力な選択肢となるが、MSイオン源で生成される窒素イオンの影響により感度低下を引き起こすことが知られている。そこで今回JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaにおける窒素キャリアガスの影響について確認したので、MSTips No. 374~376にわたり報告する。本報ではJMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaの特徴であるマルチイオン化イオン源のひとつ、EI (Electron Ionization) / FI (Field Ionization) 共用イオン源での結果について報告する。

実験

Table 1に本実験の測定条件の詳細を示す。EI法ではOFN (オクタフルオロナフタレン) 100pg/μL を 1μL 注入した。FI法ではヘキサデカン 10ng/μL を各1μL 注入した。キャリアガスはヘリウムと窒素を使用し、S/N感度、ライブラリースペクトルとの類似度 (M.F.)、分子イオンにおける質量精度 (誤差) について比較を行った。キャリアガス流量はそれぞれのキャリアガスの最適線速度を踏まえてヘリウム1.0mL/min、窒素0.55mL/min に設定した。EI法におけるイオン化エネルギーについては一般的な70eVのほか、窒素のイオン化抑制を期待できる20eVでも測定を行った。

Table 1 Measurement condition

GC : 8890GC (Agilent Technologies, Inc.)
Injection volume 1 μL
Mode Splitless
Column DB-5MS UI
(Agilent Technologies, Inc.)
30m x 0.25mm, 0.25μm
Oven temperature 40°C (1min) - 30°C/min
-250°C (2min)
Carrier flow He : 1.0 mL/min
N2 : 0.55 mL/min
TOFMS : JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha
Ion source EI/PI combination ion source
Ionization ①EI, ②FI
EI Ionization energy
(filament current)
70eV (300μA), 20eV (200μA)
Mass Range m/z 35-600
Detector voltage 2600V

結果① EI法

Figure 1にEI法におけるOFN測定結果の抽出イオンクロマトグラム (m/z 272.98±0.10) を示す。 S/N感度は窒素 (70eV) で1/3程度の低下に留まった。EI/FI共用イオン源はチャンバを持たない開放構造であるため、イオン源内の窒素滞留が少ない。これにより窒素イオンの影響が少なく、感度低下が抑制されたと考えられる。感度低下の抑制を期待した窒素 (20eV) については感度が下がる結果となった。EI/FIイオン源においてはイオン化エネルギーを変更する必要がないことが確認できた。

Figure 1. EICs of OFN (EI method)

Figure 1. EICs of OFN (EI method)

Figure 2にEI法におけるOFN測定結果のマススペクトルを示す。ライブラリースペクトルとの類似度 (M.F.) はヘリウム (70eV) と窒素 (70eV) では800以上と良好であった。窒素 (20eV) については590程度と大きく低下した。これはイオン化エネルギーを下げたことでフラグメントが抑制され、スペクトルが変化したためと考えられる。分子イオンM+・(m/z 271.9867) における質量誤差はヘリウム (70eV) では1mDa以下であったが、窒素 (70eV) と窒素 (20eV) では2mDa以下とわずかに低下が見られた。

Figure 2. Mass spectra of OFN (EI method)

Figure 2. Mass spectra of OFN (EI method)

結果② FI法

Figure 3にFI法におけるヘキサデカン測定結果の抽出イオンクロマトグラム (m/z 226.26±0.10) を示す。S/N感度はヘリウムと窒素でほぼ同等であった。ソフトイオン化であるFI法では窒素がほとんどイオン化されないため、感度低下が抑制されたと考えられる。

Figure 3. EICs of hexadecane (FI method)

Figure 3. EICs of hexadecane (FI method)

Figure 4にFI法におけるヘキサデカン測定結果のマススペクトルを示す。分子イオンM+・(m/z 226.2655) における質量誤差はいずれも2mDa以下と良好であった。

Figure 4. Mass spectra of hexadecane (FI method)

Figure 4. Mass spectra of hexadecane (FI method)

まとめ

JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-AlphaのEI/FI共用イオン源における窒素キャリアの影響について検証を行った。EI法では感度が1/3程度に低下した。FI法では感度低下は見られなかった。質量精度についてはEI法、FI法とも誤差2mDa以下と良好であった。

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