溶液・軟試料のための電子顕微鏡観察手法と観察
‐ クライオTEM法・液中観察法・凍結割断レプリカ法 ‐
EM2025-04
はじめに
透過電子顕微鏡 (Transmission Electron Microscope, TEM) は、微細構造の観察や解析に有効であり、様々な分野や材料に広く利用されている。しかし、TEM観察の試料は、高真空下で強い電子線照射を受けるうえ、電子線が透過できる厚さに加工する必要がある。そのため、熱や電子に弱い溶液試料や軟試料は、本来の構造を観察することが難しい。この問題を解決するために有効な液中観察法やクライオ技法を用いた観察手法および観察例を紹介する。
氷包埋法によるクライオTEM法と観察例
氷包埋法は、数μmの膜孔があるTEM用グリッドに試料を滴下した後、余剰分を濾紙で吸い取り、液体エタンや液体プロパンなどの冷媒を用いて急速凍結する。膜孔の中にできた薄膜状の凍結試料をクライオTEM観察する方法である。試料の形態を物理的に固定して直接観察することが可能であり、溶液や懸濁液状の試料を観察するために有効である。
氷包埋法による試料作製
アポフェリチン
水溶液中に分散するタンパク (アポフェリチン粒子) が観察される
リポソーム
脂質二重膜から構成されるリポソームの多層構造が明瞭に観察される
朱墨汁
朱墨汁中の顔料粒子や添加剤の形状・分散状態が観察される
インク材料
液中観察法と観察例
液中観察法は試料空間のみを密閉して電子顕微鏡内の真空と遮断し、大気圧状態の溶液試料を溶液のまま観察する方法である。Poseidon (Protochips社) は TEM用の液中観察試料ホルダーで、Chipの中に溶液試料を封入してTEM観察することができる。また、試料に応じて液の厚さや流量を調整することも可能である。
Poseidonを用いた液中観察法
インク材料
インク材料中のカーボンブラックの分散・凝集状態が観察される
凍結割断レプリカ法と観察例
凍結割断レプリカ法は、試料を凍結することで物理的に形態を固定し、凍結割断または凍結切削を行う方法である。得られた加工面の構造をレプリカ膜に転写することにより、常温観察が可能となる。フリーズ・フラクチャー法、フリーズ・エッチング法、クライオ抽出レプリカ法の3種類の手法があり、試料や用途により使い分ける。
フリーズ・フラクチャー法
試料の凍結割断面の凹凸を観察する方法である。凍結試料を割断すると、物性の異なる界面や、疎水面などの抵抗の少ない部分で割断が起こりやすいため、水と油の界面や脂質二重膜の内部構造を露出して観察することが可能となる。
フリーズ・エッチング法 (ディープ・エッチング法)
凍結試料を凍結切削した後、表面の氷をエッチング (昇華) させて露出した内部構造を観察する。
水の所在の観察や、エマルションのO/W構造、W/O構造、Bicontinuous構造の観察に有効な手法である。
クライオ抽出レプリカ法
液中に分散する微粒子を蒸着膜 (レプリカ膜) に抽出することで粒子を直接観察することが可能である。微粒子の液中本来の分散・凝集状態を観察でき、分析も可能である。
コロイダルシリカの分散と粒度分布
オイル中の介在物
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