JSM-IT810〈SHL〉の各検出器によるSEM像の見え方の違い
SM2025-01
JSM-IT800<SHL>の検出器系やレンズはJSM-IT810<SHL>と同じです。本アプリケーションノートの内容はJSM-IT800<SHL>にも適用できます.。
JSM-IT810〈SHL〉の検出システム
図1にスーパーハイブリッドレンズの模式図を示す。磁場レンズと静電レンズによる電磁場重畳型の対物レンズである。試料から発生した二次電子、反射電子は4つの検出器で検出する。
図1 : JSM-IT810〈SHL〉の検出システム
JSM-IT810〈SHL〉の観察モード
JSM-IT810〈SHL〉には、3つのレンズモードが存在する。通常の汎用SEMと同じように磁場レンズのみで電子線を試料面に集束させるSTDモード、対物レンズ内の静電レンズを磁場レンズと重畳させ、短焦点化と色収差を低減させるSHLモード。SHLモードにバイアス電圧を試料ステージに印加させる機能を付加したBDモードである。
図2 : JSM-IT810〈SHL〉の観察モード
JSM-IT810〈SHL〉の観察モードと使用可能な検出器
観察モードと使用できる検出器の組み合わせは、表1に示したように9通り存在する。それぞれの組み合わせから得ることのできる情報を赤字で示し、特筆すべき点を①~⑦の青字で示し下段でSEM像を紹介する。
| STDモード | SHLモード | BDモード | |
|---|---|---|---|
| SED (二次電子検出器) |
表面形状 凸凹 |
凸凹 ①STDモードよりも低角の反射電子が主体になりチャージを低減した観察可能 |
- |
| BED (反射電子検出器) |
組成 結晶方位 凸凹 ②WDにより組成と 凸凹の割合変化 |
組成 結晶方位 凸凹 |
組成 結晶方位 凸凹 ③STDやSHLよりも広い角度範囲の反射電子を検出するためSTDやSHLモードよりも凸凹情報が増す |
| UHD (上方ハイブリッド検出器) |
- | 表面形状 表面電位 ④短WDでは高エネルギー帯の二次電子が多く検出されチャージを低減した観察可能 |
表面形状 凸凹 ⑤高エネルギー帯の二次電子検出のためチャージを低減した観察可能 |
| UED (上方電子検出器) |
- | 表面形状 表面電位 ⑥エネルギーフィルターによる二次電子主体(二次電子+反射電子) or 反射電子主体の選択が可能 |
表面形状 表面電位 ⑦低エネルギー帯の二次電子検出のため試料表面の有機物の汚れや窪み、穴などの内壁や内部の観察に適す |
表1 : 3つの観察モードと各検出器で得られるSEM画像情報と特筆すべき点
① SEDを用いたSTD/SHLモードでの二次電子像観察
SHLモードではSTDモードよりも低角度の反射電子が主体になるため帯電の影響の少ない画像観察が可能。
試料:修正テープ (無蒸着) 入射電圧: 1 kV 観察倍率: x20,000
② WDの変化によるBED像の違い
WDにより組成情報と凸凹情報の割合が変化する。
BED STDモード, WD 2.5 mm
BED STDモード、WD 5 mm
BED STDモード、WD 8 mm
試料:3Dプリンターに使用される金属粉末 入射電圧: 3 kV 観察倍率: x25,000
③ BEDを用いたSTD, SHL, BDモードでの反射電子像観察
BDモードでは、STDやSHLモードよりも広い角度範囲の反射電子を検出するためSTDやSHLモードに比べ凸凹情報が増す。
BED STDモード
BED SHLモード
BED BDモード
試料:3Dプリンターに使用される金属粉末 入射電圧: 5 kV 観察倍率: x20,000
④ WDの変化によるUHD像の違い
短WDでは高エネルギー帯の二次電子が多く検出されるため帯電の影響の少ない像観察が可能。
試料:カーボン紙 (無蒸着) 入射電圧: 0.5 kV 観察倍率: x12,000, SHLモード
⑤ UHD,UEDを用いたBDモードでの像観察
UHDのBDモードを使用した画像観察では、高エネルギー帯の二次電子を検出するため帯電の影響の少ない像観察が可能。
UHD BDモード
高エネルギー帯の二次電子はUHDで検出されるために帯電現象が軽減される。
UED BDモード
低エネルギー帯の二次電子はUEDで検出されるために帯電現象が観察される。
試料:修正テープ (無蒸着) 加速電圧: 1 kV 観察倍率: x20,000
⑥ UEDを用いたSHLモードでの像観察
UEDのエネルギーフィルターによる二次電子主体 (二次電子+反射電子) または反射電子主体の観察が可能。
試料:カーボン紙 (無蒸着) 入射電圧: 2 kV 観察倍率: x100,000, SHLモード
⑦ BDモードを用いたUEDとUHDの像観察
UEDのBDモードを使用した像観察では低エネルギー帯のSE検出のため試料表面の有機物の汚れや窪み、穴などの内壁や内部の観察に適す。
低いエネルギー帯の二次電子が多く検出されるために穴の内部の構造や側面の構造が明瞭に観察できる。
(赤枠や青枠)
低角度で放出された二次電子は反射電子もより多く検出されるため、穴の内部や側面は、UED程明瞭に観察することはできていない。(赤枠や青枠)
しかし、凸凹情報を多く含む低角度の反射電子によりライン状の傷などがUEDに比べより良く観察ができる。
強い照明効果により、青枠で示した穴の内部構造が明瞭に観察できない。
●UEDとUHDの像加算
複数の検出器を使用した画像でそれぞれに特徴的な情報がある場合には、2枚の画像を加算して1つの画像として出力することも可能。
試料:メンブレンフィルター (Ptコーティング) 入射電圧: 800 V 観察倍率: x30,000, BDモード
まとめ
JSM-IT810〈SHL〉の観察モードと使用可能な検出器を示し、それぞれの特筆すべき点をSEM像と共に紹介した。
