

医薬・創薬
医薬・創薬の研究技術には最先端の理科学機器が欠かせません。日本電子は電子顕微鏡、核磁気共鳴、質量分析をはじめとした技術を連携して医薬・創薬の構造解析ソリューションを提供します。こちらのページでは結晶構造解析のワークフローから、最新型クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子構造解析まで、分析手法と応用例をご紹介いたします。
有機化合物構造解析ワークフロー
XtaLAB Synergy-EDによる電子回折の特徴
電子回折 (microED/3DED) は、分子の三次元構造を決定することができる方法の一つです。一般的な単結晶X線構造解析 (XRD) で必要な結晶化過程を必要とせず、複雑な分子における原子の立体配置を一義的に決定することが可能です。

MS・NMRによる構造精密化

電子回折では、電子密度分布をもとに構造解析を行います。原子番号の近い元素から構成される分子の場合、それぞれの元素の違いや、結合した水素原子の数を推定することが難しい場合があります。電子回折から得られた初期構造は、MSおよびNMRから得られた化学構造情報を用いて精密化することが可能です。
有機化合物分析ワークフロー

XtaLAB Synergy-EDでは、粉末試料について、そのままの状態で電子回折を行うことが可能です。さらに日本電子の質量分析計(MS)および核磁気共鳴装置(NMR)による精密な化学構造分析と組み合わせることで、サブミクロンサイズの結晶の最良な分子構造解析が可能です。
アルカロイド類有機化合物の分析例

①上 : JMS-S3000 SpiralTOF™-plus 3.0によるRhynchophyllineの精密質量分析結果
①下 : JNM-ECZL 500RによるRhynchophyllineのEdited HSQCおよびEdited H2BC NMRスペクトル

① : JNM-ECZL 500RによるCinchonidineのEdited HSQCおよびEdited H2BC NMRスペクトル
② : JNM-ECZL 500RによるCinchonidineのEdited H2BC NMRスペクトルから確認された2結合離れたCHどうしの繋がり
③ : XtaLAB Synergy-EDによるCinchonidine微小粒子の電子回折構造解析結果
ゲフィチニブの微小結晶構造解析
結晶構造の決定
XtaLAB Synergy-ED および日本電子の質量分析計、核磁気共鳴装置を用いた精密な構造解析から、より正しい結晶構造の決定が可能です。


JSM-IT200 7 kV × 1,000 二次電子像

Gefitinib : C22H24N4O3FCl
結晶構造解析ワークフロー

XtaLAB Synergy-ED による微小結晶構造解析
Gefitinib を微小結晶の状態で結晶構造解析することが可能です。
試料から二つの推定構造が得られました。


JNM-ECZL600 固体NMRによるNMR結晶構造解析
推定構造を初期構造としてDFT計算を行い、固体NMR13C化学シフトと比較することで、結晶構造を解析することができます。ここでは推定構造Aの可能性が示されました。


JMS-S3000 SpiralTOF™-plus 3.0 および溶液NMRによる分子構造解析
質量分析および溶液NMRによる分子構造解析結果は推定構造A と一致しました。


極微小単結晶構造解析 プラットフォーム XtaLAB Synergy-ED
XtaLAB Synergy-ED
は、リガク・ホールディングス株式会社と日本電子のコア技術のシナジーによって生まれた、全く新しい電子回折計です。
リガクの高速超高感度検出器 HyPix-EDと、測定から構造解析までを包括するソフトウェア「CrysAlisPro for
ED」、日本電子において長年にわたり磨き上げられてきた電子線発生・制御技術を統合、測定サンプル (ナノ結晶)
の選別からデータ収集、解析までのフローを一体化することで、従来必須とされる電子顕微鏡と結晶学の専門知識を必要とせずに、電子回折手軽に利用することが可能です。

NMR spectrometer ECZ Luminous™ (JNM-ECZLシリーズ) FT NMR装置
ECZ Luminous™ (JNM-ECZLシリーズ)は、最先端のデジタル技術と高周波技術を搭載したFT NMR装置です。
高集積化された高速・高精度デジタル高周波制御回路Smart Transceiver Systemにより、分光計のさらなる小型化と高い信頼性を実現しました。
従来の低磁場溶液NMR装置のサイズでありながら、高磁場や固体のNMR測定が可能です。
新機能Multi Frequency Drive Systemにより、標準構成の分光計でありながら多重共鳴測定が可能となり、ソリューションの広がりを提供します。

JMS-S3000 SpiralTOF™-plus 3.0 マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計
JEOL独自のSpiralTOFイオン光学系を採用した超高質量分解能・高感度MALDI-TOFMSシステムです。
JMS-S3000はSpiralTOFモードでの測定質量範囲を拡大し、SpiralTOF™-plus
3.0へと進化しました。従来装置とは一線を画する特長で、分析技術の最先端をリードし、合成高分子・材料科学・生体高分子などの幅広い分野で日々変化していく研究ニーズにお応えします。

JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha 高性能ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計
AccuTOF™ GC-Alphaは高質量分解能、高質量精度、高感度、高速データ取得、広ダイナミックレンジ、広質量範囲を同時に実現したハイエンドGC-MSシステムです。EI/FI/FD共用イオン源・EI/PI共用イオン源の、2種類のマルチイオン化共用イオン源が装着可能です。EI法では分子イオンが検出できない未知化合物であっても、ソフトイオン化法によって分子イオンを検出し、その元素組成を推定可能です。自動構造解析ソフトウェアmsFineAnalysis AIにより、マルチイオン化共用イオン源で測定されたEI法とソフトイオン化法のデータを統合解析し、ライブラリーデータベースに登録されていない化合物についての構造解析を実現します。
クライオ電子顕微鏡による構造解析
クライオ電子顕微鏡は、タンパク質に代表される電子線照射に弱い試料の観察に特化しています。
単粒子構造解析やトモグラフィー、電子線結晶構造解析などの各手法に対応しています。
GroEL

- 僅か504枚の電子顕微鏡写真で達成した、分解能1.98 ÅのGroELの電子密度マップ。
- 先行研究では、1,883枚の電子顕微鏡写真から分解能3.1 Åの電子密度マップが得られていました。(as of Oct. 26, 2020 at EMDB)
データ提供: Dr. Junso Fujita at Osaka University
ヘモグロビン

1時間当たり850枚の電子顕微鏡写真から取得した、ヒトのヘモグロビン。電子顕微鏡写真(左)、電子密度マップ(中)、および電子密度マップへの原子モデルのフィッティング(右)。

データ提供: Dr. Miki Kinoshita at Osaka University
エクソソーム

- ホールフリー位相板を用いて撮影された、単離エクソソームの断面像。
- -60°から+60°まで、2°ずつの連続傾斜画像から三次元再構成像(トモグラム)が作られています。
試料提供: Dr. Naoomi Tominaga at National Cancer Center Reseach Instrumente and The University of Tokyo.
Innexin-6 gap junction channel

- Sample: Innexin-6 (Caenorhabditis elegans)
- Microscope: CRYO ARM™ 300 (300 kV CFEG) with Gatan K2
- Software used for image acquisition : JADAS (1974 images)
- Number of particles: 91,613 (Initial pickup), 37,767 (for 3D reconstruction)
- Software used for image analysis: Relion3
- Resolution: 3.0 Å (at FSC = 0.143)
Sample by courtesy of Prof. A. Oshima (Nagoya University)
Apoferritin
The highest resolution 1.53 Å achieved by cryoEM 2019.02

- Optics features: Cold FEG 300 kV & Ω -type energy fi lter with 20 eV slit width
- Detector: Gatan K2 (image pixel size: 0.495 Å, mag x 100,000)
- Grid: Quantifoil 1.2/1.3 Cu 200 mesh, kept in the autoloader for 3 days before data collection
- No. of micrographs: 974 collected over 24 h, 840 used for image analysis
- No. of particles: 120,295 used for fi nal reconstruction
- Software: RELION 3.1b, CTFFIND4
- Resolution: 1.53 Å (B-factor: 47)
- Note: the first 56 images alone produced a map of 1.76 Å resolution (B-factor: 45)
Mouse apoferritin plasmid from Yanagisawa, Danev & Kikkawa @Tokyo University Kato, Makino, Nakane, Terahara, Kaneko, Shimizu, Motoki, Ishikawa, Yonekura & Namba 2019.02 (EMDB-9865)
B -galactosidase
β -galactosidase 2.43 Å resolution CRYO ARM™
加速電圧200 kVのクライオ電子顕微鏡 (CRYO ARM™ 200) を用いて得られたß-galactosidaseの三次元構成像
この図は大阪大学大学院生命機能研究科の難波啓一特任教授、加藤貴之助教らの研究チームによって、加速電圧200 kV、Schottky型 FEG搭載のクライオ電子顕微鏡CRYOARM™で解かれたβ
-galactosidase の構造です。
本データをフーリエシェルコリレーション法にて検証した結果(グラフ)、3D 再構成像にて2.43 Å という優れた分解能を示しました。

- Sample: β -galactosidase with PETG
- Microscope: CRYO ARM™ (Schottky 200 kV) / K2 summit
- Grid: Quantifoil 1.2/1.3 Cu 200 mesh, kept in the autoloader for 3 days before data collection
- Number of Images: 2,500 over 3 days by JADAS
- Image pixel size: 0.8 Å/pixel
- Number of particle images: 350,000 (Initial pickup), 88,564 (for final 3D reconstruction)
- Software: Motioncor2, Gctf, Gautomatch, Relion2.0
- Total dose: 70 e-/Å2 (70 frames (0.2 sec/frames x 14 sec)
Data: courtesy by Dr. T. Kato and Dr. K. Namba, Osaka University, August 2017

CRYO ARM™ 300 II (JEM-3300) 電界放出形クライオ電子顕微鏡
CRYO ARM™ 300 II
は、タンパク質に代表される電子線照射に弱い試料の観察に特化した、クライオ電子顕微鏡です。単粒子構造解析やトモグラフィー、電子線結晶構造解析などの各手法に対応しています。
CRYO ARM™ 300 II
は、顕微鏡の安定性とスループットの更なる向上だけでなく、操作性もよりシンプルになっています。また、サンプルのスクリーニングから画像データ取得までを一体化した顕微鏡です。そしてユーザーに合わせた運用を可能にする高い自由度を持っています。顕微鏡に不慣れな方であっても、簡単な操作で質の高い顕微鏡写真を得られる次世代のクライオ電子顕微鏡です。
Chemical Analysis Equipment
医薬・創薬分野に関連して利用されているJEOLの装置群およびそのアプリケーションをPDFにまとめています。
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