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窒素をキャリアガスに使用したPY-GC/MS法によるフタル酸エステル類の分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.290

概要

GCのキャリアガスとして広く使われている「ヘリウム(He)」は、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがあり、供給の遅滞等が発生した場合には一時的に代替ガスとして別種キャリアガスの使用の検討を迫られる場合がある。ヘリウムの代替ガスとしては主に水素と窒素が検討されており、特に水素は、最適な分離を行える線速度域が広く、GCのキャリアガスとしては適している。しかし、一方で水素は、可燃・爆発の恐れから扱いに注意を要するため、安全性を重視した場合、窒素ガスの方が既存のGC/MSへの導入が比較的容易である。また、窒素は、キャリアガスとして利用した場合の感度低下が水素に比べて大きく、GC/MSでの使用は不向きとされているが、その特性を把握し用途に応じて利用すれば十分な感度を得ることも可能である。今回ヘリウムの代替として窒素をキャリアガスに使用して、改正RoHS指令の規制対象となっている4種類のフタル酸エステル類(DIBP:フタル酸ジイソブチル、DBP:フタル酸ジ-n-ブチル、BBP:フタル酸ブチルベンジル、DEHP:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)をPY-GC/MS法により測定を試みた。その結果、良好な再現性と検出感度を示すデータを得ることができたので報告する。

実験

測定試料は、IEC 62321-8に記載されているPVCと液体標準試料を使用する方法に則って作成した。まず、フタル酸エステル類を含有しないPVC樹脂(1g)をTHF(20mL)で溶解した樹脂マトリックス溶液(PVC樹脂の濃度が50mg/mL)を調製し、その溶液10μL(PVC樹脂量として0.5mg)とフタル酸エステル類の混合標準液(各100ng/μL)を測定容器中で混合し、測定試料とした。混合標準液の添加量は0.5μL(100ng/μL×0.5μL=50ng)とし、添加した樹脂マトリックスのPVC樹脂量が0.5mgとなることから、樹脂中における含有濃度として計算された濃度は、100ppm(50ng/0.5mg=100ng/mg)となる。測定試料は、試行回数n=5で測定し、定量値の相対標準偏差(RSD)を算出した。尚、定量値の算出にあたっては、混合標準液の添加量を変えて200ppmから1400ppmまでの検量線を作成した。

測定結果

混合標準液の添加量を変えて作成した各フタル酸エステルの検量線をFigure.1に示した。改正RoHS指令におけるフタル酸エステルの基準値は、1000ppmであり、各フタル酸エステルの検量線はその濃度を定量するのに十分な直線性が得られている。

Figure1.  Calibration curve of DIBP, DBP, BBP, DEHP

Figure1. Calibration curve of DIBP, DBP, BBP, DEHP

次に検量線を使用して各測定試料の定量値を算出し、併せて試行回数n=5におけるRSDを算出し、結果をTable2.に示した。測定試料の濃度は基準値の1/10である100ppmであるが、繰り返し測定した際のRSDは10%以下であり、十分な再現性で測定できていることがわかる。

Table2. Relative standard deviation of quantitative value at 100 ppm

#1 #2 #3 #4 #5 C.V.

Quantitative value
(ppm)

DIBP

93 104 103 107 117 8%
DBP 94 106 104 106 120 9%
BBP 117 89 97 105 102 10%
DEHP 100 103 106 108 121 7%

また、1測定目の定量イオンのEICをFigure.2に示した。IEC 62321-8において、測定に必要な感度は100ppmの標準試料を測定した際にS/Nが30以上であることと記載されており、今回の結果はその値を十分に上回る結果となっている。

Figure2.  EIC of DIBP, DBP, BBP, DEHP at 100ppm

Figure.2 EIC of DIBP, DBP, BBP, DEHP at 100ppm

結論

ヘリウムの代替として窒素をキャリアガスに使用して、改正RoHS指令の規制対象となっている4種類のフタル酸エステル類をPY-GC/MS法により測定を試みた結果、基準値の1/10である100ppmの濃度で良好な再現性と検出感度を示すデータを得ることができた。

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