JMS-T2000GC高質量分解能がもたらす解析結果への効果−msRepeatFinderを用いたKMD Plot比較− [GC-TOFMS Application]
MSTips No.332
はじめに
このたび日本電子では、2004年に上市したGC/HR-TOFMS、JMS-T100GC "AccuTOF™ GC"から数えて第6世代目となるJMS-T2000GC "AccuTOF™ GC-Alpha"を開発し、発表した。JMS-T2000GCでは前機種と比べて3倍の高質量分解能化(10,000→30,000@m/z 614)と高質量精度化(3ppm→1ppm、EI標準イオン源)を達成した。
高質量分解能化がもたらす解析結果への影響について、原油のFDマススペクトルをmsRepeatFinderによるKMD解析結果にて評価したところ、高質量分解能化により多くの検出成分を質量分離できた結果、検出成分数が飛躍的に増加する効果を確認できた。本MSTipsでは、高質量分解能がもたらす解析結果への影響について報告する。
Fig.1 JEOL GC/HR-TOFMS systems: JMS-T2000GC
実験
測定条件をTable1に示す。試料はメキシコ湾原産の原油(SRM2779, NIST)を用いた。イオン源はEI/FI/FD共用イオン源を用いた。得られたデータをmsRepeatFinderにて解析し、高質量分解能データが解析結果にもたらす影響について検証した。
MS conditions | |
---|---|
Spectrometer | JMS-T2000GC (JEOL Ltd.) Previous model (JMS-T200GC (JEOL Ltd.)) |
Ion Source | EI/FI/FD combination ion source |
Ionization | FD+: -10kV, 0→51.2mA/min→50mA |
Mass Range | m/z 35-1,600 |
Data processing condition | |
Software | msRepeatFinder (JEOL Ltd.) |
結果
Fig.2に両装置で取得したFDマススペクトルを示す。全体的なスペクトルパターンは非常に似ていたが、各装置で取得したイオンピーク波形は大きく異なっていた。JMS-T2000GC(Fig.2(a))では高質量分解能の特長により、m/z 600を超える高質量域においても各炭化水素成分を明瞭に質量分離できていることが確認できた。これに対し前機種では質量分解能不足により、高質量域での成分分離が不十分であった。
Fig.2 FD mass spectra for crude oil: (a) JMS-T2000GC data, (b) Previous model data
次にFDマススペクトルのKMD PlotをFig.3に示す。JMS-T2000GCデータ(Fig.3(a))ではm/z 600を超えた領域においても質量分離して成分検出できているため、成分を消失することなくプロットを作成することができている。一方、前機種のデータでは、質量分離が不十分な故に、多成分でありながらあたかも一成分のようなイオン波形を描いてしまい、結果として高質量域のKMD Plot情報が消失してしまっている。
Fig.3 KMD Plots of FD mass spectrum: (a) JMS-T2000GC data, (b) Previous model data
以上のように、JMS-T2000GCで達成した高分解能の性能は、原油のような複雑な混合試料のダイレクトMS測定(今回はFD法)において特に有効であることが確認できた。
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