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JMS-S3000 "SpiralTOF™-plus 2.0" を用いたシクロデキストリンの精密質量測定と構造解析 [MALDI-TOFMS Application]

MSTips No. 361

はじめに

シクロデキストリンは、グルコース6~8個が環状に連なった糖鎖であり、グルコースの数によって、α-シクロデキストリン (グルコース6個)、β-シクロデキストリン (グルコース7個)、γ-シクロデキストリン (グルコース8個) と呼ばれる。また、環状構造の内側は空洞且つ疎水性となっており、疎水性の有機化合物を包接することができる。それにより、光や熱などに不安定な化合物の安定化や水に溶けにくい化合物の可溶化などの機能を有している。この優れた機能は、食品や医薬品分野において活用されている。
今回は、グルコース8個が環状に連なったγ-シクロデキストリン (Fig. 1) を測定試料とし、SpiralTOFモードによる精密質量測定とTOF-TOFモードによる構造解析を実施したので報告する。

測定条件

マトリックスであるDHB (2,5-Dihydroxybenzoic Acid) を10 mg / mL (50% AcN - 0.1% TFA水溶液) に調製した。測定試料として、γ‐シクロデキストリンを10 mg / mL (水溶液) に調製した。マトリックス溶液と測定試料溶液を1 : 1 (v / v) で混合した後、ターゲットプレートにスポットし、風乾させ、SpiralTOFモード (正イオンモード) にてγ‐シクロデキストリンのピークを確認すると共に、精密質量測定を実施した。そして、TOF-TOFモード (正イオンモード) により、構造解析を実施した。

Fig. 1

Fig. 1 The structure of γ-cyclodextrin

測定結果

SpiralTOFモードによる測定結果をFig. 2に示す。γ-シクロデキストリンはNaイオン付加分子として観測された (Fig. 2‐a)。次にPEG1000を内部標準試料として精密質量測定を実施した (Fig. 2-b)。観測されたγ-シクロデキストリンの実測値は1319.4105であり、計算値 (1319.4118) に対し、質量誤差は‐1.3 mDaを示した。Fig. 3にγ-シクロデキストリンのNaイオン付加分子の同位体パターンを示す。観測された同位体パターンは理論値と類似した同位体パターンを示した。

Fig. 2

Fig. 2 Mass spectra of γ‐Cyclodextrin (a) and
γ‐Cyclodextrin with PEG1000 (b).

Fig. 3

Fig. 3 Comparison of theoretical
isotope pattern (a) and obtained
isotope pattern (b).

次に、TOF-TOFモードによって得られたプロダクトイオンスペクトルをFig. 4に示す。m/z 23のピークが観測されていることから、得られたγ‐シクロデキストリンのピークが確かにNaイオン付加分子であることが分かる。プリカーサーイオンから162ユニット間隔でシグナルが観測されていることから、グリコシド結合での開裂に由来するプロダクトイオンであることが推測される。さらに、ニュートラルロスの数からグルコースの数が8個であることが確認できる。つまり、TOF-TOFモードからもγ-シクロデキストリンであることが確認できる。

Fig. 4

Fig. 4 Product ion spectrum of γ‐Cyclodextrin

まとめ

食品や医薬品分野において活用されているシクロデキストリンをMALDI-TOFMSにより測定した。SpiralTOFモードでは、高い質量精度でγ-シクロデキストリンのピークを観測した。また、TOF-TOFモードでは、グリコシド結合からの開裂と推測されるプロダクトイオンのピークが観測され、ニュートラルロスの数からグルコースの数を確認することができた。このように、JMS-S3000によって糖鎖の精密質量測定と構造解析が可能であることが示された。

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