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水素キャリアガスを使用したP&T-GC/MS法によるカビ臭原因物質の分析 [GC-QMS Application]

MSTips No. 372

はじめに

カビ臭原因物質のGC/MS分析では一般的にキャリアガスとしてヘリウムが使用される。近年ヘリウムの供給不足や価格の高騰によりヘリウムガスの確保が問題となっており、その代替ガスとして水素や窒素をキャリアガスに用いた検討が進んでいる。今回代替ガスとして水素をキャリアガスを用い、P&T-GC/MS法によるカビ臭原因物質の分析を試みたのでその結果を報告する。

分析条件

測定はパージ&トラップ装置Atomx XYZ (Teledyne Tekmar社製) と、ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zetaを使用した。内部標準液はAtomx XYZの自動添加機能を用いて2, 4, 6-Trichloroanisole-d3を10 µLを添加した。

Table 1 Measurement condition

GC : Agilent 8890
Column ZB-SemiVolatiles (0.18 mm ID × 20 m df = 0.18 μm)
Inlet temperature 230°C
Column oven temperature 40°C (3 min) → 10°C / min → 160°C → 30°C / min → 280°C (2 min)
Injection mode Split 5 : 1
Carrier gas Hydrogen, 0.7 mL / min, Constant flow
MS : JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta
Ion source temperature 200°C
Interface temperature 200°C
Acquisition mode SIM
2-MIB (m/z 95, 107, 108)
Geosmin (m/z 112, 111, 125)
2, 4, 6-Trichloroanisole-d3 (m/z 213, 215, 195)
P&T : AtomxXYZ (Teledyne Tekmar社製)
Trap Tube #1A
Purge Gas Nitrogen
Sample Volume 20 mL
Purge Time 15 min
Sparge Vessel Temperature 60°C
Purge Flow 100 mL / min

測定結果

100 ng / Lの標準液をSCANモードにて測定し、マススペクトルをNISTライブラリーと比較を行った。一部のイオン (2-MIB: m/z 150、Geosmin: m/z 149, 135) の強度比に変化が見られたが、メインピークとなるイオンの強度比に大きな変化は見られなかった。

Fig. 1

Fig.1 4 Mass spectra of 2-MIB and Geosmin (100 ng / L).

Fig.2に基準値の1/10の濃度である1 ng / LのEICを示し (2, 4, 6-Trichloroanisole-d3 20 ng / L)、Table.2 に1 ng / Lをn = 5で連続測定を行った併行精度 (%RSD) と定量下限値及び検出下限値を算出した結果を示した。2-MIB、Geosminともに%RSDが10%以下となり良好な結果が得られた。
Fig.3に各検量線 (1, 2, 5, 10 ng / L)を示した。検量線の直線性は決定係数 (r2) がいずれも0.999以上となり、良好な直線性が得られた。

Fig. 2 2-MIB
Fig. 2 Geosmin
Fig. 2 2, 4, 6-Trichloroanisole-d3

Fig.2 SIM chromatogram of 2-MIB and Geosmin (1 ng / L)

Table2. %RSD. of 2-MIB and Geosmin

Compound
Name
1 ng / L Average %RSD LOQ
(10σ)
LOD
(3σ)
1 2 3 4 5
2-MIB 0.916 1.034 1.087 0.956 0.976 0.994 6.8 0.673 0.202
Geosmin 0.901 0.946 0.998 0.988 0.902 0.947 4.8 0.459 0.138
Fig. 3 2-MIB
Fig. 3 Geosmin

Fig.3 Calibration curve of 2-MIB and Geosmin (1, 2, 5, 10 ng / L)

まとめ

水素をキャリアガスに用いてP&T-GC/MSのカビ臭測定を試みた。基準値の1/10の濃度である1 ng / Lが十分検出できることが確認でき、検量線、併行精度に関しても良好な結果が得られた。
システムの状態によっては、水素キャリアの影響によりマススペクトルに変化が見られることがあるため、キャリアガスを変更した際は、SCAN測定で十分にスペクトルパターンの確認を行うことが必要である。

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