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収差補正STEMにおける分析能力の向上

長年に渡り、避けることのできない電子顕微鏡の問題点であった球面収差が、球面収差補正機能 (Cs コレクター) が開発されたことにより球面収差を限りなく小さくすることができるようになり、電子顕微鏡の分解能が飛躍的に向上しています。特に走査透過電子顕微鏡法 (STEM 法) においては、原子オーダーの観察と分析に期待がもたれています。これは Cs コレクターを用いることにより、1 オングストローム以下の電子プローブを形成することができ、試料上照射点の単位面積あたりの電流量も補正前に比べると数十倍大きくなるからです。

近年では電子顕微鏡は像を観察するばかりではなく、STEM 機能やエネルギー分散型 X 線分光法 (EDS)、電子エネルギー損失分光法 (EELS) を組み合わせて、微小領域における分析装置として用いられることがほとんどであり、そのような背景から現在 Cs コレクターを持つ STEM 機能を用いた分析能力が注目を集めています。もちろん、STEM 機能を用いることにより高角散乱環状暗視野法 (HAADF 法) による像観察 (特に高分解能像) による原子位置の直接観察も期待されています。

下図に Al 合金中の Ω 相 (Cu2Al) における Cs コレクター STEM を用いた EELS 分析の例を示します。

Al合金中のΩ相(Cu2Al)におけるCsコレクターSTEMを用いたEELS分析の例

(a) は HAADF 像観察です。この像のコントラストでは 4 種類の信号レベルによる分布 (母相中の中間レベルの信号、Ω 相と母相との界面の高強度信号、Ω 相中の高強度信号と低強度信号) が観察され、信号強度が高いほど重元素で構成されていることに対応します。この合金には AI の母相中に Cu2Al の構造を持つ Ω 相とそのひずみを緩和するためにその界面に Ag が数原子層析出することが 3D アトムプローブなどにより明らかにされていることから、界面の強いコントラストは Ag を示し、Ω 相中のコントラストはそれぞれ Cu と Al に対応すると考えられます。

そこでそのことを確認するために EELS による元素分布像観察を行い、結果を (b) に示します。
この結果からそれぞれのコントラストは元素の違いを反映しているものであることが解ります。しかも注意深く見てみると原子コラム 1 つ 1 つに対応したコントラストを見ることができます。

またこれらの分布像から得た強度プロファイルと HAADF 像の強度プロファイルを比較した結果を (c) に示します。
それぞれの分布像は HAADF 像の強度と一致していることがわかります。

このように Cs コレクターを搭載した STEM では、EELS を用いた元素分析においても原子コラムに対応した高い空間分解能での測定が可能であることがわかりました。このような分析が可能となったのは間違いなく収差補正技術のおかげであり、今後様々な材料に応用されていくことが期待されます。

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