• 概要

直進形電子銃 JEBG-3000UBは、最大出力300kWの電子ビーム源であり、金属材料の溶解/精製用途に使用されています。その適用例として、太陽電池用多結晶シリコン製造工程での溶融精製法(冶金法)を紹介します。

太陽電池

太陽光発電は、(1)無尽蔵のエネルギー源である、(2)運転中の排出物や廃棄物がなくクリーンなエネルギーである、(3)出力は太陽電池の設置容量に比例し、多様な用途に対応できる、(4)稼動部がなくメンテナンスが容易、といった特長があり、石油代替エネルギーとして期待されています。現在様々な材料が研究されており、材料はシリコン系、化合物系、有機系に大別できます。Table 1 に代表的な各種の太陽電池と変換効率を示します[1]。

現在、シリコン系のうち結晶系 Si を用いた太陽電池は、高性能、高信頼性、安全性(毒性元素を含まない)、資源的に豊富など、多くの利点を持っており広く利用されています。用途も住宅屋根を始め、屋外照明、RV 車やボート用、航行支援、灌漑揚水、走行電線より隔絶した地域の電力等に用いられています。


太陽電池の生産量は今後も高い水準で推移すると予測されています。今後、太陽電池の生産量を満たす多結晶 Si 原料を安定供給できるかどうかも、大きな鍵となっています。

研究レベル(小面積) 実用レベル(モジュール)
シリコン系 単結晶Si 25.0% 22.9%
多結晶Si 20.4% 15.5%
薄膜Si系 11.7% *注1 10.4% *注2
アモルファスシリコンと単結晶Siを組み合わせた太陽電池 22.5% 17.0%
化合物半導体系 化合物薄膜(CIS系) 19.4% 13.5%
III-V族化合物半導体太陽電池 40.7% *注3 -
有機系 色素増感太陽電池 10.4% 8.2%
有機高分子を用いた太陽電池 5.2% -
Table 1 各種太陽電池の変換効率


注1:a-Siと微結晶Siを組み合わせた積層型太陽電池
注2:a-Siとa-SiGeを組み合わせた3層積層太陽電池モジュール
注3:III-V族化合物半導体とGeを3層積層した太陽電池で、240倍の集光下で測定された値

多結晶Si 原料供給

結晶シリコン太陽電池は、太陽電池生産量の7割以上を占め、今後も高い割合を占め続けることが予想されています。半導体用を含む多結晶Si 原料の世界生産量は年々増え続け、2012年には20万トンを超える生産量が予測されています。

半導体用のSi 原料は、イレブン・ナイン(純度99.999999999%)の高純度が必要ですが、太陽電池用Si 原料(ソーラーグレードシリコン)は、シックス・ナイン(純度99.9999%)の純度でも十分であるといわれています。従来は半導体産業で発生する安価な規格外品をソーラーグレードシリコンとして利用してきましたが、その供給量には限界があります。太陽電池の生産量が増加するに従い、ソーラーグレードシリコンの新しい精製技術が望まれてきました。
以下に多結晶Si 原料の代表的な製造方法であるシーメンス法と電子ビームを使用した溶融精製法(冶金法)について述べます。

シーメンス法

金属Siを、いったんトリクロロシラン(SiHCl3)にガス化して純化し、再び固体にする方法です[2][3]。金属Siと塩酸(HCl)を反応させて、液体トリクロロシラン(SiHCl3)を生成させます。トリクロロシランを、蒸留と精製を繰り返し、高純度化させます。析出炉(Fig. 1)中で、Si ロッドを1000 ℃程度に加熱します。トリクロロシラン(SiHCl3)と水素を流すことにより、Si ロッド上に高純度多結晶Si を析出させます。最終的にイレブン・ナインの高純度が得られます。
Fig.1
Fig.1 シーメンス法概略図
 

溶融精製法(冶金法)

NEDO プロジェクトで開発された溶融精製法(冶金法)[4]について述べます。

金属Siを出発原料として、含有される不純物元素を冶金的に除去して純度を高める技術です。シーメンス法の様に半導体グレードには達しませんが、太陽電池で使用されるシックス・ナイン(SOG-Si)の純度が得られます。

シーメンス法のように大掛かりな設備を必要としないので、設備投資を低く抑えられ、原料を得るのに必要なエネルギーも少なくて済む利点があります。

溶融精製法(冶金法)は、具体的には、リン除去および金属不純物の粗除去からなる第一工程と、ボロンや炭素除去、および金属不純物の仕上げ除去からなる第二工程とで構成されています(Fig. 2)。

リン除去は電子ビーム溶解にて行います。金属Si に、高出力の電子ビームを照射し溶解させます。蒸気圧の差によりリンを優先的に蒸発させ、純度を上げます。

鉄、アルミニウム、チタン等の金属不純物の除去は、一方向凝固にて行います。金属が凝固する際、不純物の濃度分布が不均一になる現象を偏析現象といいますが、溶融したシリコンを徐々に冷却し液相側に不純物を移動させ、最終的に1箇所へ集め除去します。

Fig. 3はJEBG-3000UBを用いた溶解炉のイメージ図です。Fig.3ではハースに1台、鋳型に1台の電子銃を使用しています。直進形電子銃の数を増やして、出力を上げることも可能です。

Fig.2  溶融精製法のプロセス及び電子ビーム溶解プロセスの概略図     Fig.2  溶融精製法のプロセス及び電子ビーム溶解プロセスの概略図
Fig.2 溶融精製法のプロセス及び電子ビーム溶解プロセスの概略図

Fig.3  多結晶Si原料の精錬に高出力電子ビーム源が使われているイメージ図
Fig.3 多結晶Si原料の精錬に高出力電子ビーム源が使われているイメージ図

参考文献

[1] 電子ジャーナル 2010 太陽光発電技術大全 P13
[2] 日経マイクロデバイスApril 2007 P51(NIKKEI MICRODEVICES April 2007 P51)
[3] 半導体産業新聞2007年5月2日
[4] NEDO 「エネルギー使用合理化シリコン製造プロセス開発」 事後評価報告書

関連製品 RELATED PRODUCT