容易な操作によるXPS 化学結合状態分析
JPS-9000MC/SpecXPS 光電子分光装置
JPS-9000MC/SpecXPS外観写真
光電子分光装置(XPS;X-ray photoelectron Spectroscopy) は、 金属、高分子、半導体などの表面の元素分析、状態分析として幅広く利用されています。 特に励起源としてX 線を用いるため、試料の帯電が分析の障害になることなく、 また試料損傷が少ない測定が容易にできる表面分析装置です。 この点は他の表面分析装置に比べて大きな特長のひとつです。 新しくXPS 用のコンピュータシステムを開発しましたのでその概要を紹介します。
特長
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Windows 対応
MS-Windowsの機能、特長を活かしたシステム系で構成されているため、基本的に世界共通オペレーションで操作できます。 -
マウス操作によるイージーオペレーション
操作はメニューバーから必要な項目をクリックして、プルダウンメニューを開いて必要な目的項目をクリックするだけのイージーオペレーションでデータ収集、処理ができます。 -
マルチウィンド
データ測定中でも、波形分離、定量計算、データ出力などのデータ処理が平行して処理可能です。 - 得られたデータの処理は、装置に組み込みのソフトウェア以外に市販されている多くのアプリケーションソフトウェアが利用できます。
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自由自在なソフトウェア間でのデータ移動
スペクトルや画面の表示の任意の画面をコピーまたはカットして、ワープロソフトなどにペーストすることが可能ですので、測定結果のレポート作成が容易に行えます。 -
ネットワークへの拡張性
Ethernetインターフェースを標準装備しているので、他の装置、コンピュータとのネットワーク構築が容易です。 -
自動分析
操作性の向上のために、オートディプス分析、オートチルト分析、マルチポイント分析、マルチサンプル分析などの機能アップが可能です。
測定例
代表的な絶縁物の分析例として、コート紙の分析例を示します。 上質紙の表面に光沢を持たせるために、 アルミナやシリカなどの膜をコートして反射率を大きくすることで紙表面に明るさを持たせています。 この膜を作成する際に紙との接着性を良くするためにバインダーが塗布されていますが、 このバインダーの化学状態が接着性を大きく左右しています。 このバインダーのXPS 分析により、特性の評価を行いました。 初めに、図1 のワイドスペクトル測定を行います。表面の元素分析により不純物などの検出ができます。 バインダーの成分の炭素の結合状態分析を行うために波形分離処理を行いました。 図2 の分離表示画面にピークの情報などを入力して、計算を実行した結果を図3 に示します。 Cls スペクトルは3 ピークに分離できます。peak-01 はC=O、peak-03 はCH結合で、 peak-02 はC-O結合の変化した状態でpeak-02 の存在量がコート紙の膜の接合性に大きく寄与していることが判明しました。 このように絶縁体の分析が容易にできることでその実用性が見直されています。
ワイドスペクトル測定画面
波形分離表示画面
C1s スペクトル( 試料: コート紙)波形分離結果