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核磁気共鳴装置

核磁気共鳴装置 (NMR) とは

原子核の共鳴で謎を解く

図1 核磁気共鳴装置

核磁気共鳴装置 (図1) は、薬品や農薬のような化学薬品、生薬などの天然物、ビニール、ポリエチレンといった高分子材料、さらには核酸、タンパク質のような生体物質など、炭素、酸素、水素、窒素、リンといった原子からなる有機化合物の分析に最も威力を発揮します。特に、その原子のつながりである分子の平面化学構造や立体構造まで知ることができるため、これら有機化合物の分析では中心的な位置を占めています。
物質は細かくみると、分子の集まりであり、分子は原子のつながりからできています (図2) が、その原子はさらに原子核と電子から構成されています (図3) 。
核磁気共鳴装置は、これらの原子核が、強磁場の中で、外部からラジオ波 (60 MHz~1 GHz) を加えることにより、共鳴現象を起こす性質を利用して、いろいろな有機化合物の分析を行うものです。

図2 物質と分子や原子

図3 原子の構造

NMR装置の構造

図4 NMR装置の構成

核磁気共鳴 (NMR) の原理

原子の中には、その原子核が例えば水素原子核のように小さい磁石の性質をもっているものがあります。このような磁石は、ちょうど「こま」のように自転しています。これを磁場の中に入れると、こまの首振り運動と同じようなふるまいをします (図5)。これを核スピンといいます。この首振り運動 (歳差運動といいます) の回転する周期は決まっていて、ちょうどその周期と同じ周波数のラジオ波を外部から加えてやると、共鳴が起こります。共鳴によってエネルギーの吸収が起きますので、この吸収量を電気的にはかることで共鳴が起きたかどうかが分かります。
その電気信号をNMR信号といいます。磁場強度が11.74 T (テスラ) では、水素原子核は約500 MHzで共鳴します。この共鳴周波数は原子核の種類によって異なり、表1のようにいろいろな周波数で共鳴します。

図5 核スピン

表1 11.74T(テスラ)の時の共鳴周波数

NMRから得られる情報

NMR信号は、同じ水素原子核であっても図6のようにいろいろな信号が現われます。図6はエタノールの信号です。これをNMRスペクトルといいます。ラジオ波は光ではありませんが、やはり電磁波ですから光の場合と同じようにスペクトルと呼び、信号は右側からCH3 (メチル基)、CH2 (メチレン基)、OH (水酸基) に分けられます。
NMRスペクトルは官能基のグループに分かれていますが、これをケミカルシフトといいます。
このケミカルシフトは物質が同じでない場合は違った位置に信号が現れますので指紋と同じです。

  • 化学シフト (信号の位置): 原子核の化学構造 (官能基など) に関する情報

  • スピンースピン結合 (信号の分裂): 隣接する近傍の原子核との関係に関する情報

  • 信号強度 (信号の面積): 原子核の数の比に関する情報

  • 緩和時間 : 原子核の動的な情報

図6 エタノール (CH3CH2OH) の水素原子核NMRスペクトル

NMRの構成

NMR装置の基本的な構成

  • 磁石 (永久磁石、電磁石、超伝導磁石があり、磁場が極めて均一で、時間変動のない極めて安定な磁石が必要)

  • ラジオ波を発生させる高周波発振器

  • 共鳴周波数を与えてまた吸収エネルギーを検出するプローブ (コイル)

  • プローブで検出された信号を増幅する増幅器

  • これらを制御し、得られたデータを処理するためのコンピュータ

現在のほとんどのNMR装置はパルスフーリエ変換型 (FT)です。発振器から発生したラジオ波をパルス状に印加することでケミカルシフト全域を共鳴させます。またこれを繰り返して信号を足し合わせる積算操作により、感度を向上させます。フーリエ変換はこの場合に時間軸のデータとして得られるNMR信号を周波数軸に変換する数学的な計算処理です。 ケミカルシフトは共鳴周波数のわずか10億分の1といった、ごくわずかな周波数の差しかありません。それを検出するためには、発振器も磁石も極めて安定していることが必要です。

NMRで、できること

分子構造の解析および未知の化学物質の同定

有機化学、無機化学、生化学、製薬、新素材、石油化学など非常に広範囲

定量分析

高分子化学、合成化学品の品質管理、食品化学など

混合物解析

メタボロミクス、生化学、食品化学など

ダイナミクス (化学反応速度、相互作用、結合部位の特定)

有機化学、無機化学、生化学など

緩和時間 (分子運動性、核間距離)

有機化学、高分子化学など

拡散係数 (分子量、多量体の確認、分子・イオンの移動、制限空間の評価)

有機化学、高分子化学、新素材、電池など

NMRで、できる具体的な事例

化学分析

  • 反応材料・原料の純度評価・組成分析・定量評価

  • 反応中間体の同定、反応中間検査

  • 反応効率の評価

  • 化学交換速度の解析

  • 最終反応物の微視構造解析

医薬品

  • 反応材料・原料の純度評価・組成分析・定量評価

  • 反応中間体の同定、反応中間検査

  • 反応効率の評価

  • 生薬標準品の純度測定

  • 化学交換速度の解析

  • 最終反応物の微視構造解析

  • 薬物動態、代謝など

ポリマー・繊維

  • 高分子の一次構造解析

  • 合成高分子の立体規則性 (タクティシティー)・立体構造解析

  • 共重合高分子の重合度評価

  • ブロック共重合体のドメインサイズ評価

  • 結晶・非晶 (アモルファス) 構造の同定、結晶化度評価

  • 合成高分子の劣化解析、架橋構造の同定、架橋密度の評価

  • 樹脂の硬化・劣化解析

  • 物性・機能の微視的構造からの評価

  • 合成高分子中の添加物・不純物の同定・定量分析

  • 動的構造の解析

薄膜・コーティング

  • 塗料などの薄膜合成樹脂の分子構造解析・劣化解析

  • 有機EL・有機薄膜太陽電池などの有機薄膜デバイスの分子間パッキングの解析

  • 液晶の秩序度・配列評価

材料研究

  • リチウムイオン電池の品質管理・構造解析・劣化解析

  • 触媒・ゼオライト・分子ふるいなどの微視構造解析・機能評価

  • 液晶材料の分子構造解析・秩序度評価・配列評価

  • iPS 細胞の品質管理

エネルギー

  • 電極・電解質電解液・セパレーター材料の微視構造解析・特性評価

  • 電解質中のイオン移動度の評価

  • 燃料電池・リチウムイオン電池の当世評価

  • 石炭・石油 (原油、製油) の品質管理

  • 太陽電池を見込んだ光合成の基礎的研究

バイオ

  • 化学交換、ダイナミクス

  • 生体分子の溶液構造多形

  • 分子認識

  • 生体分子の固体結晶多形

農業・食品

  • 食品含有物および食品添加物の同定・組成分析・定量評価

  • 食品添加物標準品の純度測定

  • 工業的生産食品・農産品の産地同定 (多変量解析)

  • 農薬・肥料・土壌の組成分析

  • 牛乳の乳脂肪分定量

  • うどんの中に含まれるエチレングリコールの定量

環境

  • 水質調査・管理

  • 土壌の成分同定・成分分析

  • 認証標準物質の純度測定 (農薬など)

  • CO2削減を目指した光合成研究

  • 火山灰、花粉、黄砂、PM 2.5など大気浮遊物の分析

金属・鉱物

  • 天然物・人工鉱物の微視構造解析

  • 金属・合金・固溶体・アモルファス金属など材料の構造解析・電子状態解析

法医学・科学捜査

  • 死後硬直のメタボロミクス解析

  • 麻薬の検知・同定・分子構造解析

  • 脱法ハーブの分子構造解析

医療

  • 尿や血液などの検査 (多変量解析)

  • 病理組織の組成分析

半導体・電機

  • アモルファスシリコンなど電子部品無機材料の微視構造解析・電子状態解析

  • 有機薄膜トランジスター・有機薄膜太陽電池・有機EL・有機半導体などの分子構造解析

  • 液晶の構造解析

航空・自動車

  • 燃料・潤滑油の分析

  • タイヤゴムと充填剤の分子構造解析・劣化解析

  • 電子部品材料の微視構造解析

  • 塗料の組成分析

  • ケーシングなどの強度解析・劣化解析

  • 車のワックスなどの表面保護材などの分析

関連リンク

NMRの歴史

日本電子 (当時 日本電子光学研究所) は、1956年にNMR装置一号機 「JNM-1」を発売しました。

最新のNMR装置 ECZ Luminous?
(JNM-ECZLシリーズ)

ECZ Luminous? (JNM-ECZLシリーズ) は、最先端のデジタル技術と高周波技術を搭載したFT NMR装置です。

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