核磁気共鳴装置(NMR)とは

原子核の共鳴で謎を解く

核磁気共鳴装置は、薬品や農薬のような有機化合物、およびビニール、ポリエチレンといった高分子材料、そして核酸、タンパク質のような生体物質を中心とした炭素、酸素、水素、窒素、リンといった原子からなる有機物の分析に最も威力を発揮します。特に、その原子のつながりである平面構造や立体的構造まで知ることができるため、これら有機化合物の分析では中心的な位置を占めています。

JNM-ECZR series FT NMR装置

物質は細かくみると、原子のつながりからできていますが、その原子はさらに原子核と電子から構成されています。

核磁気共鳴装置は、この原子核が磁場の中で、外部からラジオ波(60MHz~1GHz)を加えることによって共鳴現象を起こす性質を利用して,いろいろな有機化合物の分析を行うものです。

NMRの原理

原子の中には、その原子核が例えば水素核のように小さい磁石の性質をもっているものがあります。このような磁石はちょうど「こま」のように自転していますがこれを磁場の中に入れるとこまの首振り運動と同じような振舞をします。この首振り運動(歳差運動といいます)の回転する周期は決まっていて、ちょうどその周期と同じラジオ波を外部から加えてやると、共鳴します。その時エネルギーの吸収が起きますので、この吸収量を電気的にはかることで共鳴が起きたかどうかが分かります。

その電気信号をNMR信号といいます。磁場強度が11.74T(テスラ)では水素核は500MHzで共鳴します。この共鳴周波数は原子核の種類によって異なり、図2のようにいろいろな周波数で共鳴します。


図1


図2 11.74T(テスラ)の時の共鳴周波数

NMRから得られる情報

NMR信号は、同じ水素核であっても図3のようにいろいろな信号が現われます。図3はエタノールの信号です。これをNMRスペクトルといいます。ラジオ波は光ではありませんが、やはり電磁波ですから光の場合と同じようにスペクトルと呼び、信号は右側からCH3(メチル基)、CH2(メチレン基)H2O(水)に分けられます。

NMRスペクトルは官能基のグループに分かれていますが、これをケミカルシフトといいます。

このケミカルシフトは物質が同じでない場合は違った位置に信号が現れますので指紋と同じです。


図3 エタノールの水素核 NMRスぺクトル

NMRの構成

NMR装置の基本的な構成です。

  1. 磁石(永久磁石、電磁石、超伝導磁石があり、超高均一で、時間変動のない高安定度な磁石が必要)
  2. ラジオ波を発生させる高周波発振器
  3. 共鳴周波数を与えてまた吸収エネルギーを検出するプローブ(コイル)
  4. プローブで検出された信号を増幅する増幅器

そしてこれにこれらをコントロールするコンピュータと、得られた信号をデータ処理したりデータを書き出すためのコンピュータが付属しています。

現在のほとんどのNMR装置はパルスフーリエ変換型(FT)です。発振器から発生したラジオ波をパルスにすることでケミカルシフト全域を共鳴させ、またそれを繰り返す積算操作を行ない、信号を足していくことによって感度を向上させます。フーリエ変換はその信号が時間軸で得られるものを周波数軸に変換させる数学的な計算です。

ケミカルシフトはわずか10億分の1といったわずかな周波数の差しかありませんから、それを検出するために発振器も磁石も極めて安定していることが必要です。


図4 NMR装置の基本的な構成図