透過型電子顕微鏡(TEM)と質量分析計(MS)を接続したin-situガス反応観測システムによるPd触媒反応観測
MSTips No. 455
はじめに
MEMS-Chip型試料ホルダーにより、汎用TEMにおいても高圧や水中など実際にサンプルを使用する環境に近い条件下での観察が可能となった。さらにMSなどのガス分析機器との組み合わせにより、TEM観察と発生ガス分析を同時に行うことが可能となった。本MSTipsではProtochips社製のin-situサンプルフォルダーを装着したJEM-ARM200FにJMS-Q1600GCを結合し、排ガス浄化触媒であるパラジウム(Pd)の反応観測を行ったので報告する。
Figure 1 In-situ gas reaction observation system
実験
サンプルには市販のPdナノ粒子を用いた。in-situサンプルホルダーには原料ガスとしてメタン(CH4)と酸素(O2)を供給し、25~960℃の範囲で加熱(必要に応じ保持と冷却)しながらTEM観察とMSガス分析を同時に行った。Table 1に各装置の測定条件を示す。
Table 1 Measurement conditions
結果
Figure 2にin-situサンプルホルダーの昇温プログラム(中段)とTEM像(上段)およびモニターイオンm/z 44 (CO2)におけるSIMクロマトグラム(下段)を示す。560℃付近においてPd粒子の細かい振動と同時にCO2の発生が観測された。冷却するとこれらの挙動は止まり、再度加熱することで再現した。更に加熱することでPd粒子の凝縮が観測された。
Figure 2 TEM images (upper), Temperature of in-situ sample holder (middle), SIM chromatogram at m/z 44 (lower)
Figure 3にサンプルホルダー温度350→560→350℃の間の、各モニターイオンにおけるSIMクロマトグラムを示す。原料ガスであるメタン(CH4)と酸素(O2)の減少、および反応生成物である水(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)の増加が観測された。
Figure 3 SIM chromatograms at each monitor ions
結論
今回得られた結果はPd触媒反応のメカニズムの解析や、条件最適化において重要となる。JEM-ARM200FとJMS-Q1600GCを組み合わせたin-situガス反応観測システムは触媒など高機能材料の分析での活躍が期待できる。