DARTを用いた合成化合物の迅速確認–NMR試料管からの直接質量分析-

  • 概要

MSTips No.223 日本電子株式会社

 大気圧雰囲気下で試料をイオン化し直接質量分析を行う「アンビエントイオン化法」の先駆けとして、DART(Direct Analysis in Real Time; DART)イオン源は2003年にJEOL USA, Inc.で産声を上げ、その後様々な開発・改良を経て、2005年に市場での販売が開始された。今日では、DARTイオン源を利用した多くのアプリケーションが発表され、関連する論文数は400報を超えている。
 DARTイオン源は大気圧下、開放系での測定を可能とするため、固体、液体、気体などの幅広い形態の試料に対応可能となる。また、測定操作は、DARTイオン源から噴出されるガス流の中に分析対象の試料をかざすのみであることから、誰でも簡単に迅速な測定を行うことができる。このようなDARTの特徴を活かし、有機合成物の化学組成式の迅速決定に活用したアプリケーションも数多く発表されている。今回、有機合成物の構造解析に欠かせない核磁気共鳴法と、DARTによる質量分析を組み合わせた合成化合物確認に関するアプリケーションについて報告する。

結果及び考察

 測定試料はDulcine (C9H12N2O2)を用い、 溶媒はNMRでよく使用される軽DMSO及び重DMSOを用いた。軽DMSO溶液、重DMSO溶液ともに 20mg/0.6mLで試料調整した。
 NMR試料管からのサンプリング方法をFig.1に示す。サンプリングには先の細長いガラス棒を作製し、用いた。NMR試料管の試料溶液にガラス棒先端を浸し、それをDARTイオン源に直接かざすことで測定を実施した。測定作業は1分以内に完了する迅速さであった。
 Fig.2に軽DMSO溶液及び重DMSO溶液における、DulcineのDARTマススペクトルを示す。DARTでは大気中の水分子がはじめにイオン化され、クラスター化した水イオンと試料分子とのイオン分子反応により試料分子がイオン化する。溶媒に含まれる水素、及び重水素はイオン化に影響を与えないため、溶媒の組成に関係なく、プロトン付加分子 ([M+H]+)が観測される。観測されたDulcineのプロトン付加分子の同位体パターンを理論同位体パターンと比較した結果、良い一致を示した。同時に、精密質量解析を実施したところ、1.1mDa以下という良好な精度をもって組成を確認することができた。
 DARTは重溶媒の影響を受けないため、観測したイオンの帰属を誤ることはなく、迅速・簡単に測定した化合物の分子量確認および分子式の組成推定を行うことが可能である。

DART sampling
【Fig.1 DART sampling】

DART mass spectra of Dulcine
【Fig.2 DART mass spectra of Dulcine】
(a) in DMSO, (b) in DMSO-d6

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