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高速スペクトル記録速度(50スペクトル/秒)におけるGCxGC/EI感度 [GC-TOFMS Application]

MSTips No.226 日本電子株式会社 MS事業ユニット

 包括的二次元ガスクロマトグラフ(GCxGC)法は、直列に接続した分離モードの異なる2種類のキャピラリカラムと、1段目のカラムと2段目カラムの間に設置されたクライオトラップシステム(モジュレータ)により構成されており、一度の測定で2種類の分離モードでの分離分析を行うことが可能となる。1段目のカラムで分離され溶出した成分は、上述のモジュレータにより一定の時間間隔(通常5~10秒程度)でトラップされた後、直ちに2段目のカラムに導入される。 2段目のカラムには内径が細く長さの短いカラムが使用され、1段目のカラムからの溶出成分がトラップされている間(5~10秒)の非常に短時間での分離が行われる。つまり、1段目のカラムからの溶出を5~10秒のセグメント毎にトラップし、そのトラップした成分を2段目のカラムで分離することになり、結果的に得られるクロマトグラムは通常のクロマトグラムとは異なり二次元的なクロマトグラムとなる。
 GCxGC 分析では、前述のように一定時間毎に溶出成分をクライオトラップするため、溶出成分のピーク幅は非常に狭く、つまり、クロマトグラム上のピークが非常にシャープとなり、クロマトグラム上の見かけの感度は高くなる。一方、質量分析計でシグナルを収集しスペクトルを作成(記録)する場合、スペクトル記録速度と一スペクトルあたりの積算時間は反比例の関係となる。 GCxGC測定では早いスペクトル記録速度(20スペクトル/秒以上)で測定を行う必要があるため、一スペクトルあたりの積算時間は通常のGC測定に比べて短くなり、その結果スペクトル上の見かけの感度は低くなる。
 本MSTipsでは、通常のGC測定としてモジュレータを動作させずに1スペクトル/秒及び50スペクトル/秒で取得したデータと、GCxGC測定としてモジュレータを動作させ50スペクトル/秒で取得したデータの比較を行い、GCxGC/EI測定における感度について検証したので報告する。

測定方法

 測定条件をTable1に示す。テストサンプルはOctafluoronaphthalene(OFN)1pg/uLを使用した。GCxGCにおけるクライオトラップによる感度向上と、スペクトル記録速度の違いによる感度の違いを検証するために、モジュレータのON/OFF及びスペクトル記録速度以外の条件は全て同一にした。Fig.1にZOEX社のZX2サーマル モジュレータを示す。上部より冷却ガスを吹き付けクライオトラップを行い、横方向から加熱ガスを一定の時間間隔で吹き付けてトラップされた成分を脱着することで、1段目カラムからの溶出成分を5~10秒のセグメントに分けている。このセグメントに含まれている成分は2段目カラムでFast GC的に分離され、検出器に到達する。

ZOEX thermal modulator system
【Fig.1 ZOEX thermal modulator system】
【Table1 Measurement condition】
Measurement condition

結果

 Fig.2にOFN分子イオンC10F8m/z 271.9872)の抽出イオンクロマトグラム(EIC)を示す。Fig.2上段(a)は1スペクトル/秒・モジュレータOFF(通常のGC測定を想定)、中段(b)は50スペクトル/秒・モジュレータOFF、下段(c)は50スペクトル/秒・モジュレータON(GCxGC測定)のプロファイル測定データである。 Fig.2 (c)に示すGCxGC測定では、モジュレータにより4秒間隔で成分のトラップが行われているため、OFNのピークが4秒間隔で複数得られている。Fig2 (c)のデータはあくまで生データであり、通常は得られた生データをモジュレータの動作間隔(今回は4秒間隔)でスライスし、各スライスを90度回転させ縦 方向に展開することで二次元データを得ている。
Fig.2 (c)を二次元データ化したものをFig.3に示す。
 Fig.2 (a)と(b)データを比較すると、(b)はスペクトル記録速度が早いため一スペクトルあたりの積算時間が少なくなり、その結果クロマトグラムピークの強度値はより低くなった。一方、Fig.2(b)と(c)を比較すると、同じスペクトル記録速度・積算時間にも関わらず、クライオトラップを行った(c)データの方がク ロマトグラムピークの強度値は約27倍高く、クライオトラップによる大幅な感度向上を確認できた。また積算時間が短ければ、ノイズレベルは低くなる。 Fig.2(a)データのS/Nを計算したところ、その値は300程度であった。一方、(c)データではS/N1,500程度が得られた。OFNのGCxGC測定では、クライオトラップと低ノイズレベルの効果により、通常のGC測定と比較してS/Nは向上した。GC測定における感度は、サンプル及び溶媒の性質、カラム種類や状態、 GC条件、MS条件などにもよるので、全てのケースでGCxGC測定がGC測定よりも高感度になるとは言えない。しかし今回の検証から、GCxGC測定でも pgオーダーの高感度測定が十分可能であることが示唆された。

OFN分子イオンC10F8(m/z 271.9872)の抽出イオンクロマトグラム(EIC)
【Fig.2 OFN 1pg, m/z 271.9872 (mass window: ±50ppm) EIC chromatograms】
(a) 1 spectrum/sec, modulator: OFF, (b) 50 spectra/sec, modulator: OFF, (c) 50 spectra/sec,modulator: ON

OFN 1pg, m/z 271.9872 (mass window: ±50ppm) 2 dimensional EIC chromatogram
【Fig.3 OFN 1pg, m/z 271.9872 (mass window: ±50ppm) 2 dimensional EIC chromatogram】

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