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TG-MS法によるシャープペンシル芯の分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.265

熱重量分析(Thermogravimetry : TG)は加熱による測定試料の重量変化を測定する手法である。TG-MS法ではTGにおける発生ガスを質量分析計(MS)に導入し、その定性解析を行う。今回はNETZSCH社製 熱重量示差熱同時分析装置 STA 2500 Regulusと日本電子製 四重極型質量分析計JMS-Q1500GCを用い、シャープペンシル芯の分析を行ったので紹介する。シャープペンシルの芯は黒鉛と樹脂の混合物を焼成した後、濃さと滑らかさを付与させるための油に浸して作製する。焼成の工程で樹脂は炭化するため、製品の段階では炭素と油のみの組成となっており、今回の分析では加熱したことで油由来の変化が確認できた。

実験

測定試料には市販のシャープペンシル芯を使用、全て0.5mm×60mmのもの1本で約25mgとなり、これを細かく折ってTGの試料カップに入れて測定した。最初にA社製の濃度違い(4H、HB、4B)で結果を比較、次にA社製の濃度HBについて製品グレード違いで比較、最後に濃度HBについてメーカー違い(4社)で比較を行った。装置の測定条件をTable1に示す。

Table 1. Measurement conditions

TG
Furnace temp. 60°C→20°C/min→1000°C
Transfer line temp. Interface 500°C, Line 350°C
Purge gas flow He, 100mL/min
GC
Oven temp. 300°C
Column Blank tube 2.5m × 0.25mm i.d.
Column gas flow He, 2mL/min
MS
Ion source temp. 250°C
Iterface temp. 300°C
Ionization mode EI, 70eV
Ionization current 50μA
Relative EM voltage +200V
Measurement mode Scan
Scan range m/z 10~500

結果

A社製の濃度HBについて、TG曲線およびTICクロマトグラムをFigure1に示す。300°C前後の12%の重量減少が油の気化に由来するものと考えられる。これと同時にTICクロマトグラム上にもピークを確認できた。

Figure1. TG curve and TIC chromatogram

Figure1. TG curve and TIC chromatogram

TICクロマトグラム上のピークのマススペクトルをFigure2に示す。ライブラリーサーチの結果より、発生ガスは炭化水素系の油に由来するものと推測された。

Figure2.Mass spectrum

Figure2. Mass spectrum

次にA社製の濃度違いについて比較を行った。濃度は4H、HB、4Bの順に濃くなる。TG曲線をFigure3に、TICクロマトグラムをFigure4に示す。なお、TICクロマトグラム上のピークのマススペクトルは全てFigure2に示したものと同じであり、含まれている油の成分は同じと考えられる。濃度が濃くなるにつれて重量の減少量が2%、12%、15%と大きくなり、含有される油の量が多いことが示唆された。またTICクロマトグラム上のピーク強度もこれと相関を持つことが確認できた。

Figure3. TG curves

Figure3. TG curves

Figure4. TIC chromatograms

Figure4. TIC chromatograms

次にA社製の濃度HBの製品グレード違いについて比較を行った。グレードAの商品説明には、構造が強く折れづらいとの記載があり、価格もBに比べ高価であった。TG曲線をFigure5に、TICクロマトグラムをFigure6に示す。TICクロマトグラム上のピークのマススペクトルはいずれもFigure2に示したものと同じであり、含まれている油の成分は同じと考えられる。重量変化とTICクロマトグラム上のピーク強度はほぼ同じであり、グレードAとBで油の量にはそれほど違いがないと推測された。

Figure5. TG curves

Figure5. TG curves

Figure6. TIC chromatograms

Figure6. TIC chromatograms

最後に濃度HBのメーカー違い(4社)について比較を行った。 TG曲線をFigure7に、TICクロマトグラムをFigure8に、重量の減少量とTICクロマトグラム上のピーク面積値の一覧をTable2に示す。同じ濃度HBであっても、メーカーによって油の含有量は異なると推測された。

Figure7. TG curves

Figure7. TG curves

Figure8. TIC chromatograms

Figure8. TIC chromatograms

Table2.Values of weight loss and TICC peak area

Weight loss TICC peak area
A社 12% 2.9E+09
B社 17% 4.7E+09
C社 13% 3.5E+09
D社 9% 2.2E+09

TICクロマトグラム上のピークのマススペクトルをFigure9に示す。A社とB社、C社とD社がそれぞれほぼ同じマススペクトルとなり、ライブラリーサーチの結果より、前者は炭化水素系の油、後者はシリコーン系の油に由来するものと推測された。

Figure9. Mass spectra

Figure9. Mass spectra

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