GC-QMS Application: 水素をキャリアガスに使用したHS-GC/MS法によるVOCの分析

  • 概要

MSTips No.312

概要

GCのキャリアガスとして広く使われている「ヘリウム (He) 」は、様々な事情により、一時的な価格の上昇やその供給状態の不安定化等の問題を抱えることがあり、供給の遅滞等が発生した場合には一時的に代替ガスとして別種キャリアガスの使用の検討を迫られる場合がある。ヘリウムの代替ガスとしては主に水素と窒素が検討されており、特に水素は、最適な分離を行える線速度域が広く、GCのキャリアガスとしては適している。今回ヘリウムの代替として水素をキャリアガスに使用し、厚生労働省が定める水質基準に相当する揮発性有機化合物 (VOC) を対象として、ヘッドスペース (HS)-GC/MS法により測定を試みた。その結果、良好な再現性と検出感度を示すデータを得ることができたので報告する。

実験

測定対象とする揮発性有機化合物は、Table.1に示した12成分で、0.1, 0.2, 0.5, 1, 2, 5, 10 ppbとなるように水溶液を調整し、測定試料とした。尚、各測定試料には、内部標準物質として、フルオロベンゼンおよびp-ブロモフルオロベンゼンを2.5 ppb、1,4-ジオキサン-d8を20 ppbの濃度で添加した。

Table.1 Target VOC list

Carbon tetrachloride

trans-1,2-Dichloroethene

Trichloroethylene

Dibromochloromethane

1,4-Dioxane

Dichloromethane

Benzene

Bromodichloromethane

cis-1,2-Dichloroethene

Tetrachloroethylene

Chloroform

Bromoform

各測定試料は、10mL当たり3gの塩化ナトリウムを添加した後、Table.2に示した測定条件下で測定し、検量線を作成した。また、水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法 (→以後、公定法) において、基準値の1/10の濃度 (→以後、下限値) において、定量値の変動係数が20%以下であることが要求されている。その検証のため、下限値に近しい濃度として、1,4-ジオキサンは1ppb、それ以外のVOCは0.1ppbの測定試料を試行回数n=5で連続測定し、定量値の変動係数 (C.V.) を算出した。

Table.2 Measurement condition

HS Sample Block temperature 70°C
Sampling mode Trap (Number of samplings = 3)
Heating and shaking time 30min
GC Column InertCap AQUATIC (GL Sciences Inc.),
length 60m, inner diameter 0.32mm, film thickness 1.4μm
Injection port temperature 200°C
Column oven temperature 40°C (3min)→5°C/min→100°C→10°C/min→200°C (5min)

Injection mode (Direct connect column to the transfer line)
Carrier gas Hydrogen, 2mL/min, Constant flow
MS Ion source temperature 250°C
Interface temperature 200°C
Acquisition mode SIM

測定結果

測定結果より、検量線の相関係数及び下限値に近しい測定試料 (1,4-ジオキサンは1ppb、それ以外のVOCは0.1ppb) を連続測定した際の変動係数をTable.3に示した。

Table.3 C.V. and Correlation coefficient of each VOC

Compound Name C.V. Correlation
coefficient
Carbon tetrachloride 0.9 0.9999
1,4-Dioxane 1.3 0.9999
cis-1,2-Dichloroethene 0.7 0.9999
trans-1,2-Dichloroethene 1.6 0.9997
Dichloromethane 3.8 0.9999
Tetrachloroethylene 0.9 0.9999
Compound Name C.V. Correlation
coefficient
Trichloroethylene 0.4 0.9999
Benzene 0.9 0.9999
Chloroform 0.3 0.9999
Dibromochloromethane 1.9 0.9999
Bromodichloromethane 0.8 0.9998
Bromoform 2.9 0.9997

また、対象成分のうち代表例として基準値がもっとも低い四塩化炭素と対象成分の中で最も感度が低い1,4-ジオキサンについて、検量線及び下限値に近しい濃度のSIMクロマトグラムをそれぞれFigure.1とFigure.2に示した。

Figure.1  Calibration curves of Carbon tetrachloride and 1,4-Dioxane

Figure.1 Calibration curves of Carbon tetrachloride and 1,4-Dioxane

Figure.2  SIM chromatograms of Carbon tetrachloride(0.1ppb) and 1,4-Dioxane(1ppb)

Figure.2 SIM chromatograms of Carbon tetrachloride (0.1ppb) and 1,4-Dioxane (1ppb)

検量線の相関係数については、全てのVOCで0.999以上であり、良好な直線性が得られている。また、下限値の濃度における変動係数も全てのVOCで5%以下であり、公定法が必要とする20%以下の値を十分に満たす結果が得られている。

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