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低真空用フィラメントを利用したポリスチレンの酸素雰囲気下における発生ガス分析 [GC-QMS Application]

MSTips No.320

はじめに

熱重量測定(TG)/示差熱分析(DTA)-MSは、サンプル加熱時の重量変化と熱の出入りをTG/DTAで測定しつつ、加熱時の発生ガスをMSで測定するシステムである。TG/DTAでは、加熱時の雰囲気ガスを変えることで様々な環境を想定した分析を行うことができ、ガス種としては、ヘリウム、窒素といった不活性ガスの他に、空気といった酸素を含む助燃性ガスを利用することもある。
通常、MSにおいて良く利用されるイオン化法である電子イオン化(EI)法は、フィラメントからの熱電子をイオン化に利用するが、空気のような酸素が大量に存在する雰囲気下においては、フィラメントの線材が熱酸化反応で断線するため、長時間安定した測定を行うことが困難である。
弊社では、酸素雰囲気下においても安定してEI法による測定が行えるように耐酸化性能を高めた新しい線材を利用した低真空用フィラメントを開発した。今回、ポリスチレンをサンプルとして、様々な酸素濃度における雰囲気下の加熱時の発生ガスを低真空用フィラメントを利用したTG/DTA-MSで測定したので結果を報告する。

Figure.1  Configuration of TG/DTA-MS system

Figure.1 Configuration of TG/DTA-MS system

装置

 測定には、NETZSCH社のTG/DTAであるSTA2500と四重極ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-Q1500GCを接続したTG/DTA-MSシステム(→Figure.1)を使用した。STA2500とJMS-Q1500GCは温調可能なトランスファーラインとその中に通したキャピラリーチューブで接続されている。
 JMS-Q1500GCは、イオン源にフィラメントを2つ装着可能であり、測定に使用するフィラメントは、メソッドで切り替え可能である。通常、標準のフィラメントが2つ装着されているが、今回一つを低真空用フィラメント(P/N:782305971)に交換し、測定に使用した。尚、低真空用フィラメントは、JMS-Q1500GCの他に三連四重極ガスクロマトグラフ質量分析計JMS-TQ4000GCでも利用することが可能である。

実験

サンプルのポリスチレンは、1±0.2mg程度に小片化したものを、アルミパンに秤量して測定に供した。TG/DTA及びMSの測定パラメーターをTable.1に示す。 TG/DTAの雰囲気ガスは、2系統あるパージガスラインに疑似空気(He/O2=4/1)とHeをそれぞれ接続し、両者の流量を可変することで、0, 2, 5, 8, 10%(v/v)の酸素濃度を設定した他、保護ガスも含めて全てのガスラインに疑似空気を接続することで、20%(v/v)の酸素濃度についても設定した。

Table.1  Measurement conditions of TG/DTA-MS system

TG
Furnace temp. 100°C → 20°C/min → 600°C
Transfer line temp. Interface 300°C, Line 300°C
Purge gas flow 100mL/min, Oxygen conc. 0~20%(v/v)
GC
Oven temp. 300°C
Column Blank tube, 2.5m×0.25mm i.d.
Column gas flow 2mL/min
MS
Ion source temp. 250°C
Interface temp. 300°C
Ionization mode EI, 70eV
Ionization current 30µA
Relative EM voltage +200V
Measurement mode Scan
Scan range m/z 30~500

結果 

 各酸素濃度で測定したポリスチレンのTICCをFigure.2に示した。各TICCにおいてポリスチレンの分解によって生じた発生ガスのピークが観測されているが、酸素濃度が増加するにつれてピークの発生温度が低くなっており、ポリスチレンの熱分解温度が酸素濃度によって変化することがわかる。

Fig. 2 TICCs of PS before and after UV irradiation using Py-GC-QMS.

Figure.2 TICC at each oxygen concentration

ポリスチレンの熱分解生成物のうち、スチレンモノマー(M.W.=104)とベンズアルデヒド(M.W.=106)について、分子イオンに相当する質量のEICをFigure.3とFigure.4に示した。ベンズアルデヒドは、スチレンモノマーが雰囲気中の酸素によって酸化されて生成したと考えられ、それを示すように、雰囲気中の酸素濃度の増加に伴い該当ピークの面積は増大しており、逆にスチレンモノマーのピーク面積は減少している。

Figure.3  EIC(m/z 104) at each oxygen concentration

Figure.3 EIC(m/z 104) at each oxygen concentration

Figure.4 EIC(m/z 106) at each oxygen concentration

Figure.4 EIC(m/z 106) at each oxygen concentration

まとめ

耐酸化性能を高めた低真空用フィラメントを装着したTG/DTA-MSを用いて、様々な酸素濃度の雰囲気下でポリスチレンを分析した。その結果、酸素濃度による熱分解温度の変化と、熱分解生成物の変化について観測することができた。

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