GC-TQMS Application: FastGC-MS/MS法によるほうれん草中農薬迅速分析

  • 概要

MSTips No.340

はじめに

食品中の残留農薬測定では多数の検体をいかに早く処理するかが大きな課題の1つである。ハイスループットGC-MS/MSシステム"JMS-TQ4000GC"では1秒間に最大1000種のイオンを定量測定できる。このシステムにFastGC条件を適用すると、2 μLという通常の注入量で10 ppbの農薬の一斉分析が15分で可能となる。しかし、農薬の一斉定量分析では基準値の10 ppbよりさらに一桁低い1 ppbレベルの感度が求められる。そこで、大量注入を行い定量下限の濃度を下げることでハイスループットな農薬一斉定量分析が可能か検証したので報告する。

測定条件

標準溶液の調整には富士フイルム和光純薬株式会社製の農薬混合標準液PLシリーズを用いた。PL1、2、3、4、5、6、9、10、11、12、13を等量混合したものを準備し、それを段階的に希釈して1~100 ppbの標準溶液を作製した。また、疑似マトリックスにはPEG300を用いた。
測定試料はほうれん草10 gを全自動固相抽出装置ST-L400 (アイスティサイエンス社製) を用いたSTQ法にて処理して得た抽出液に、農薬濃度1 ppbとなるよう添加したスパイク試料を用いた。今回は292成分の農薬について定量分析を実施した。今回使用した測定条件をTable 1.に示す。

JMS-TQ4000GC UltraQuadTM TQ
高感度・高速・多成分MS/MS測定を同時に実現したGC-MS/MSシステム

Table 1. Measurement condition

[GC-TQMS condition]

System JMS-TQ4000GC UltraQuadTM TQ (JEOL)
Ionization mode EI+: 70 eV, 50 µA
GC column DB-5ms (Agilent), 20 m x 0.18 mm, 0.18 µm
Oven temp. 50°C (3 min)→ 50°C / min→ 120°C (0 min)
→ 30°C / min→ 300°C (4.6 min)
Inlet system Large volume inlet, LVI-S200 (AiSTI SCIENCE)
Inlet temp. 100°C (0.1 min)→ 260°C (120°C / min, 3 min)
→ 280°C (20°C / min, 9min)
Inlet mode Solvent Vent, 20 µL
He flow 0.7mL / min (Constant Flow)
MS/MS mode High Speed mode

結果

今回使用したFastGC条件で得られたTICCクロマトグラムをFig.1に示す。厚生労働省の通知法「GC/MSによる農薬等の一斉試験法 (農産物)」で採用されているGC条件の場合、測定時間は31.5分となるが、今回使用したFastGC条件では15分で測定を完了しており、通知法の半分以下の時間となった。JMS-TQ4000GCでは最大1000チャネル / 秒のMS/MS測定が可能であり、FastGC条件下においても多成分一斉分析が可能であるが、同時に高感度化も達成している。Fig.2に農薬1 ppbの抽出イオンクロマトグラムを示す。1 ppbでも標準試料、スパイク試料とも分離と形状が良好なデータが得られており、FastGC条件下においても農薬分析を高感度に行えることが示された。

Fig.1 TIC chromatograms using FastGC condition

Fig.2 Extracted ion chromatograms for pesticides 1 ppb

次にほうれん草中農薬292成分1 ppbデータの再現性と、そこから得られる装置検出限界 (IDL) を各々Fig.3及び4に示す。
Fig.3より、農薬292成分の96%でCVが30%以下、約90%でCVが20%以下、49%でCVが10%以下の再現性が確認することができた。
そしてFgi.4より、農薬292成分の97.6%で1 ppb以下の装置検出限界を、81.5%で0.5 ppb以下の装置検出限界を有していた。高い再現性と感度を持って農薬292成分のFastGC-MS/MS測定が行えることを確認できた。

Fig.3 Repeatability results of pesticides 292 compounds,
1 ppb, n=8 data

Fig.4 IDL results of pesticides 292 compounds,
1 ppbn, 20uL injection

最後に作成した検量線の直線性と、回収率の結果を各々Fig.5及び6に示す。
農薬292成分の検量線において、93.8%の成分で決定係数が0.990以上、86.3%で決定係数が0.995以上の良好な直線性を得ることができた。
添加回収試験を10 ppb添加試料で実施したところ、異常回収率 (80%以下または120%以上) は37.7%であった。異常回収率が高い原因は、疑似マトリクスのPEG300によるマトリクス効果がほうれん草抽出液のマトリクス効果より大きいためと考えられる。PEG添加量の検討により回収率を改善できる可能性ある。

Fig.5 Linearity of calibration curves for pesticides 292 compounds,
1-100 ppb, n=2 data

Fig.6 Recovery rate of pesticides 292 compounds,
10 ppb

今回食品中残留農薬分析にFastGC-MS/MS法を適用した例を報告した。FastGCでは単位時間あたりの溶出成分が通常GCよりも多いため、MS/MS装置には高速測定能が求められる。加えて農薬分析には高感度も要求されるが、JMS-TQ4000GCはそれらを同時に実現した次世代の高性能GC-MS/MS装置である。従来装置では困難だったFastGC-MS/MS測定に対応しており、FastGCによるスループット向上と、MS/MSによる正確な定量分析を両立させたシステムである。

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