GC-TQMS Application: Fast GC-MS/MS法と通常のGC-MS/MS法による食品 (農産物) 実試料中残留農薬の一斉分析結果比較

  • 概要

MSTips No.342

はじめに

食品中の残留農薬測定では多数の検体をいかに早く処理するかが大きな課題の1つである。ハイスループットGC-MS/MSシステム"JMS-TQ4000GC"では1秒間に最大1,000種類のイオンをMS/MS (SRM) 測定可能である。このシステムにFast GC条件を適用すると、農薬の一斉分析が約15分と、通常の半分以下の時間で測定可能となる。今回、JAあいち経済連様ご協力の下、Fast GC-MS/MS法と、厚生労働省の通知法「GC/MSによる農薬等の一斉試験法 (農産物)」で採用されているGC条件 (以下、通常のGC法) に近い条件による、食品実試料中残留農薬の一斉分析結果比較を行ったので報告する。

測定条件

標準溶液は関東化学社製農薬混合標準液を混合して調製し、その内218成分を測定対象に設定した。測定試料の前処理法としてはQuEChERS法 (EUメソッド) を採用し、農産物 約100検体の前処理を実施した。今回使用した測定条件をTable 1に示す。

JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQ
高速・高感度な多成分一斉分析を同時に
実現したハイスループットGC-MS/MSシステム

Table 1 Measurement condition

[GC-TQMS condition]

System JMS-TQ4000GC UltraQuad™ TQ (JEOL Ltd.)
Ionization mode EI+
GC column DB-5ms UI (Agilent Technologies, Inc), 20m x 0.18mm, 0.18µm
Oven temp. 50°C (3min) → 120°C (50°C /min, 0min) → 300°C (30°C /min, 4.6min)
Inlet system PTV inlet, LVI-S250 (AiSTI SCIENCE CO.,Ltd.)
Inlet temp. 100°C (0.1min) → 260°C (120°C/min, 3min) → 280°C (20°C/min, 6min)
Inlet mode Solvent Vent, 5 mL
Flow rate 0.7 mL/min (Constant Flow)
SRM mode High Speed mode

結果

今回使用したFast GC条件と、通常のGC条件で農薬混合標準液を測定した際のTICクロマトグラムをFig.1に示す。通常のGC法の場合、測定時間は計34.5分となるが、今回使用したFast GC条件では計15分であり、通常のGC法と比較して半分以下の時間で測定が完了した。
Fast GC条件の適用により測定時間が短縮され、スループットが大幅に向上することが確認された。

上段に通常のGC法のTICC(測定時間:計34.5 min)、下段にFast GC法のTICC(測定時間:計15 minを表したグラフ)

Fig.1 Comparison of TIC chromatograms using with conventional GC and Fast GC condition

次に、検出限界 (10ppb) を超えて農薬が検出された実試料のTICクロマトグラムと、検出された農薬成分の抽出イオンクロマトグラム (EIC) をFig.2に示す。TICクロマトグラム上では大量のマトリクス (夾雑) 成分が確認できるが、そのようなマトリクス量が多い実試料においても、検出された各農薬成分のEICでは十分な分離が得られた。JMS-TQ4000GCでは最大1,000チャンネル/秒の高速SRM測定が可能であり、Fast GC条件を用いた多成分一斉分析のようなSRM速度が要求される分析にも十分に対応可能であることが確認された。

左側に「農薬が検出された実試料のTICC」、右側に「検出された農薬成分のEIC」を表したグラフ

Fig.2 Comparison of TICC and EIC of the pesticides in the agricultural products

最後に実試料から検出限界を超えて検出された農薬66成分の定量値比較結果をFig.3に示す。Fig.3では、横軸に該当農薬成分の通常のGC法での定量値 (他社製TQMSを使用)、縦軸にFast GC法での定量値 (JMS-TQ4000GCを使用) を取り、それらの値を2次元マップ上でプロットしている。

実試料から検出限界を超えて検出された農薬成分は、Fast GC条件と通常のGC条件で共通の結果が得られており、いずれの手法においても66成分の農薬が検出された。また、検出された成分の定量値に関しても、Fig.3に示す通り、x = y の直線上近傍にプロットが集中しており、Fast GC条件と通常のGC条件でほぼ同一の定量結果が得られた。Fast GC法による定量結果が、通常のGC法で得られる定量結果と遜色ないことが確認された。

今回、食品中残留農薬分析にFast GC-MS/MS法を適用した一例を報告した。Fast GC条件では単位時間あたりの溶出成分が通常のGC条件よりも増加する傾向があるため、使用するMS/MS装置には高速測定能が求められる。加えて農薬分析には高感度も要求されるが、JMS-TQ4000GCはそれらを同時に実現した次世代の高性能GC-MS/MS装置である。従来装置では困難だったFast GC-MS/MS測定を行う上で必要な性能を十分に有しており、Fast GC法によるスループット向上と、MS/MS測定による正確な定量分析を両立させたシステムである。

Fig.3 Comparison results of quantitative values for 66 pesticides which were over 10 ppb concentration

謝辞

本アプリケーション作成において、JAあいち経済連様からの多大なご協力をいただきました。この場を借りて深く御礼申し上げます。

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