JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaを用いたFD法による潤滑油中の添加剤分析 [GC-TOFMS Application]
MSTips No. 356
はじめに
JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alphaは高分解能TOFMS、マルチイオン化モード、自動解析ソフトmsFineAnalysisにより高度な分析結果をハイスループットに提供する。MSTips No. 355 ではポリプロピレン製品中の臭素系難燃剤の分析例を用い、添加剤分析におけるFD法の有効性を示した。今回は潤滑油の摩擦低減剤として知られるモリブデンジチオカルバメート (MoDTC) の分析例を紹介する。
実験
Table 1に本実験の測定条件の詳細を示す。サンプルには市販のエンジンオイル添加剤2種を用いた。サンプルAは100% MoDTC、サンプルBはMoDTCを成分に含む製品である。
Table 1. Measurement conditions
Sample | Engine oil additive (Sample A: 100% MoDTC, Sample B: contains MoDTC) |
---|---|
Preprocessing | Dilute 1 mg sample with 1mL chloroform |
MS | JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-Alpha (JEOL) |
Ion source | EI/FI/FD combination ion source |
Ionization | FD method, Cathode voltage -10 kV, Emitter current 0 → 51.2 mA/min → 40 mA |
Mass range | m/z 50~1,600 |
結果
Figure 1にFD測定結果のTICクロマトグラムとマススペクトルを示す。Sample AからはCH数が異なる3種類のMoDTCのピークが観測された。Sample BからはMoDTCに加え、ベースオイル由来の炭化水素化合物と推測されるピークが観測された。
Figure 1. TIC chromatograms and mass spectra by FD method
Figure 2にC44H88N2O2S6Mo2の実測スペクトルとシミュレーションスペクトルを示す。モノアイソトピックイオンにおける質量誤差は2mDa程度であり、同位体パターンの一致度も良好であった。
Figure 2. Mass spectra of MoDTC (C44H88N2O2S6Mo2)
Figure 3にmsRepeatFinderにより作成したサンプルBのKMDプロットを示す。KMDプロットを用いることで不飽和度の異なる炭化水素化合物シリーズのピークとMoDTCのピークを可視化して明確に区別することが可能である。
Figure 3. Mass Spectrum and KMD plot of Sample B
まとめ
JMS-T2000GC AccuTOF™ GC-AlphaのFD法ではMoDTCの様な高質量成分も容易に検出することが可能である。FD法はクロマトグラム分離がないため混合物の分析では微量成分を見落とす可能性があるが、msRepeatFinderのKMDプロットを用いることで可視化して確認することが可能である。
- このページの印刷用PDFはこちら。
クリックすると別ウィンドウが開きます。
PDF 1.09 MB