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溶媒抽出-GC-MS法によるフタル酸エステル類及びPIP (3:1) の同時分析 [GC-QMS Application]

MSTips No. 379

はじめに

イソプロピル化フェノール = ホスファート (3:1) (→ 以後、PIP (3:1) と省略) は、可塑性や難燃性を付与する目的でポリ塩化ビニル (PVC) やポリウレタンなどの樹脂材料に使用される他、耐摩耗性や耐圧縮性付与の目的で、油圧作動油や潤滑油、コーティング剤、接着剤、シール剤といった様々な材料に使用されている。PIP (3:1) の化学構造をFigure. 1に示した。2021年2月に米国環境保護庁 (米国EPA) は、有害物質規制法 (TSCA) 規則第6条に基づき、PIP (3:1) を含む5物質について残留性、生物蓄Area性及び毒性 (PBT) を有する物質として、含有する製品や成形品の国内での製造・商取引の規制を開始している。

本法では、ガスクロマトグラフ質量分析計「JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta」を使用して、RoHS指令において2019年より規制されているフタル酸エステル類4物質、フタル酸ジイソブチル (DIBP)、フタル酸ジブチル (DBP)、フタル酸ブチルベンジル (BBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル (DEHP) と合わせて、PIP (3:1) を溶媒抽出-GC-MS法で分析する方法を検討したので結果を報告する。

Figure 1

Figure 1. Chemical structure of PIP (3:1)

ガスクロマトグラフ質量分析計 JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

ガスクロマトグラフ質量分析計
JMS-Q1600GC UltraQuad™ SQ-Zeta

実験

サンプルは、PIP (3:1) の使用が疑われる製品で、測定に際し50.3 mgを秤量、テトラヒドロフラン5 mLに浸して60分間超音波抽出したものを検液とした。検量線は、フタル酸エステル類のDIBP、DBP、BBP、DEHPを0.5, 5, 25 mg / L (樹脂中濃度で50, 500, 2500 ppmに相当)、PIP (3:1) としてTris (2-isopropylphenyl) Phosphateを0.001, 0.01, 0.05 mg / L (樹脂中濃度で0.1, 1, 5ppmに相当) で作成し、上記サンプルの定量値を算出した。GC/MSの測定条件の詳細をTable 1に示す。

Table 1. GC/MS measurement conditions

GC Injection volume 1 μL
Column VF-5 ms 15 m length, 0.25 mmi.d. 0.1 μm film thickness (Agilent Technologies, Inc.)
Column Flow 1 mL / min (He), constant flow
Injection mode Split 1/5
Inlet Temp. 300°C
Oven temp. 100°C → 25°C / min → 320°C (5.2 min)
MS Ion source temp. 250°C
Interface temp. 300°C
Ionization EI, 70 eV
Acquisition mode SIM
Monitor ion DIBP : m/z 149, 205, 223, DBP : m/z 149, 205, 223, BBP : m/z 91, 149, 206
DEHP : m/z 149, 167, 279, PIP (3:1) : m/z 335, 409, 452
※Bold & Under line : Quantitative ion

結果

フタル酸エステル類およびPIP (3:1) について作成した検量線と検量線の下限値におけるSIMクロマトグラムをFigure. 2および3に示す。検量線は全成分について相関係数 (R) が0.999以上であり、良好な直線性が得られている。下限値におけるSIMクロマトグラムについても十分な強度が得られており、特にTris (2-isopropylphenyl) phosphateについては、サブppmレベルでも検出が可能となっており、TSCAの規制において不検出が求められるPIP (3:1) の測定に十分対応できる感度が得られていると考える。

Figure 2 DIBP
Figure 2 DBP
Figure 2 BBP
Figure 2 DEHP
Figure 2 Tris (2-isopropylphenyl) phosphate

Figure 2. Calibration curves of phthalates and tris (2-isopropylphenyl) phosphate

Figure 3 DIBP
Figure 3 DBP
Figure 3 BBP
Figure 3 DEHP
Figure 3 Tris (2-isopropylphenyl) phosphate

Figure 3. SIM chromatograms of phthalates (0.5 mg / L = 300 pm) and
tris (2-isopropylphenyl) phosphate (0.001 mg / L = 0.6 ppm)

検量線を使用してサンプルを測定した結果は、DIBP = 不検出、DBP = 不検出、BBP = 不検出、DEHP = 1,001 ppm、PIP (3:1) = 16,900 ppmとなった。Tris (2-isopropylphenyl) Phosphateの標準試料 (0.05 mg / L = 5 ppm) のSIMクロマトグラムとサンプルから検出されたPIP (3:1) のSIMクロマトグラムをそれぞれFigure. 4に示した。一般的に、PIP (3:1) はイソプロピル基の結合位置が異なる複数の異性体を含有しているため、それらのピークが検出される。今回は、標準試料として1つの異性体のみを使用し、そのピーク面Area値を使用して全ての異性体の定量値を算出している。

Figure 4

Figure 4. SIM chromatogram of standard & sample

結論

RoHS指令で規制されているフタル酸エステル類とTSCAで規制されているPIP (3:1) を溶媒抽出法で同時分析する方法について検討した。TSCAにおけるPIP (3:1) の規制では、製品からの不検出が求められているが、今回分析する方法では、0.1 ppmという極めて低濃度からの定量が可能となっており、フタル酸エステル類と合わせて規制に対応した分析に可能な結果と言える。

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