精細な三次元構成
TEM トモグラフシステムは、トモグラフィーのための連続傾斜像の取得から三次元再構成までを自動化しています。この TEM トモグラフシステムには、電子線トモグラフィーに特有のさまざまな調整を自動化するため、独自のアルゴリズムを搭載したソフトウェア(Recorder、Composer、Visualizer-Kai)を採用しています。
特長
Recorder
トモグラフィーに必要な連続傾斜像を短時間で自動取得するためのソフトウェアです。
三次元再構成の精度をあげるためには、試料を一定の角度ステップで傾斜させながら、より多くの画像を元データとして取得する必要があります。設定された角度ステップでの試料の傾斜をはじめ、傾斜にともなう視野のズレの補正、フォーカスの調整、ならびに画像の取得までを自動で行います。

Recorder操作画面
Composer
取得された連続傾斜像からコンピュータトモグラフィーで三次元再構成するためのソフトウェアです。
電子線トモグラフィーでは画像データの正確なアライメントが課題となります。Composerでは、この課題を傾斜軸の三次元的な位置の算出、精密な角度情報の解析することで解決しています。そのため、精度の高い三次元再構成を簡単な操作で短時間に行うことが可能になりました。

Composer操作画面
Visualizer-Kai
三次元再構成されたデータをボリュームレンダリングやサーフェースレンダリングなど、様々な方式で表示するとともに、ディスプレイ上で「手に取るように」自在に扱って観察することができるアプリケーションソフトウェアです。
マウス操作で三次元像を自在に動かして表示できます。また、Visualizer-Kai には、測長機能も備えています。


Visualizer操作画面
高傾斜試料台(オプション)
高傾斜角度での画像取得には、高傾斜試料台が必要です。

三次元再構成の応用例:Tight junctionの三次元構造解析
【測定条件】
加速電圧:120 kV
傾斜角度:±65°、1°ステップ
試料:Tight junction(マウス小腸上皮、試料厚さ70 nm)
試料の説明:Tight junctionは脊椎動物の上皮細胞の最頂端領域に存在する細胞接着構造です。

Fig.1 Tight junctionのTEM像
Tight junctionでは隣接する細胞間の細胞膜が密着することにより、水やイオンを通さないバリアとして働いています。
今回はこのTight junctionにおける細胞膜の三次元的な形態についてEM-05500TGPを用いて解析を行いました。
Movie1:Composerによる画像データの位置合わせ
Recorderによって撮影した連続傾斜像を、Composerによって位置合わせを行いました。従来の方法では金コロイド粒子のようなフィディシャルマーカーが必要でしたが、Composerではフィディシャルマーカーなしで位置合わせを行うことができます。

tight junctionのボリュームレンダリング像
Movie2:tight junctionのボリュームレンダリング像
Visualizer-Kaiでは三次元再構成した像を自由に動かして観察することができます。

tight junctionのスライス像
Movie3:tight junctionのスライス像
Tight junctionにおける細胞膜の密着構造は、同じ位置の膜同士がくっつき続けているわけではなく、三次元的に接着の位置を変えているダイナミックな構造であることが観察できます。

測長
Visualizer-Kaiでは測長をすることも可能です。