国立医薬品食品衛生研究所
国立医薬品食品衛生研究所(National Institute of Health Sciences)は、明治7年(1874年)に医薬品試験機関としての官営の東京司薬場として発足した、わが国で最も古い国立試験研究機関です。
人と社会に貢献する、レギュラトリーサイエンス
平成9年7月、医薬品等の承認審査等薬事行政全般の見直しに対応し、国立衛生試験所から国立医薬品食品衛生研究所(以下 国立衛研)に改称しました。
国立衛研は、医薬品や食品のほか、生活環境中に存在する多くの化学物質について、その品質、安全性及び有効性を正しく評価するための試験・研究や調査を行っています。それらの成果は、主に厚生行政に反映され、国民の健康と生活環境を維持・向上させることに役立てています。また世界的な視野に立った活力ある試験・研究を行うとともに、関連分野における国際協力を支える機関としての責任を果たしています。
国立衛研では、厚生労働省内の共同利用型機器として、核磁気共鳴装置(以下NMR装置)6機、質量分析装置 10機、ラボラトリー情報管理システム(LIMS)サーバー 1機、X線構造解析装置 1機などが設置され、厚生労働省の研究者を中心に使用されています。
国立衛研では、科学技術の進歩によって生み出されたものを、有効性や安全性を見据えて、真に国民の利益にかなうように調整するためのサイエンス「レギュラトリーサイエンス」の活発な展開を目指しています。
国民全体の利益に直接的に関与する研究では、多くの場合、結論が出るまでの時間が、研究上、重要なファクターとなります。例えば、いわゆる「脱法ハーブ」含有成分の検出やニセ薬(無承認無許可医薬品)の摘発、アレルギー性を持つ特定原材料の検出など、常に時間を意識した研究が行われています。従って、機器の高感度化による、準備/分析期間の短縮は、最優先で考慮され、最先端機器の整備を行っています。
最近整備された最先端機器として、JEOL RESONANCE社製の極低温プローブ「UltraCOOL プローブ」付きの800MHz NMRがあります。本機器は、13C核の感度が3600以上ありますが、本機器を利用すると、13C-13Cの結合を直接的に明らかにするINADEQUATE測定が、下の結果で明らかなように10 mgの試料で現実的なものとなります。
この試料(生薬の有効成分で分子量480)では、43時間でほとんどすべての直接結合が観測されていますが、同じ測定を従来のプローブでおこなった場合、25倍の1075時間(45日間)に及ぶ非現実的積算が必要になります。
このような高感度な機器の導入で、違法薬物についての構造決定の時間が圧倒的に短縮され、迅速な法令/通知が可能となっています。
また、いわゆる「脱法ハーブ」に添加された合成カンナビノイド類等の成分は、非常に活性が強いものも多く、研究者の安全性を考えると、多量の成分の取り扱いには注意が必要となります。しかし、機器が高感度化されれば、単離量も僅かですむことになります。
国立衛研では、定量NMRの公的規格への応用についても、積極的に研究展開を行っています。定量NMRは、第16改正日本薬局方第二追補において、正式採用されることになっています。
ここで紹介した事例は、国立衛研の共同利用型機器を利用した研究のほんの一部ですが、これからも、これらの機器は、人と社会に貢献する「レギュラトリーサイエンス」の重要なツールとして活躍することになります。
弊社の納入装置
NMR装置
- JNM-ECA800 2機, JNM-ECA600 2機(共同利用機器として)
MS装置
- DART-TOF/MS, JMS-MS700(共同利用機器として)
など、多数納入されています。