SpiralTOF™とmsMicroImager™による高質量分解能マスイメージ解析
MSTips No.211
マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いたイメージング質量分析法(MALDI-Imaging)は, サンプル表面の有機化合物の分布を可視化できる最先端の質量分析法である。主に凍結組織切片表面のタンパク質・ペプチド・薬剤とその代謝物などを中心にアプリケーションを拡大している。MALDI-Imagingでは, レーザー照射位置をサンプル表面上で二次元に走査し, 各レーザー照射位置においてマススペクトルを取得する。この二次元の位置情報を持つマススペクトル群を解析することで, サンプル表面の任意の分子量をもつ有機化合物の分布を, マスイメージとして描画することができる。JMS-S3000 SpiralTOF™ は, 弊社特許技術であるらせん軌道型イオン光学系を採用している(Fig. 1)。従来のリフレクトロン型イオン光学系より5-10倍長い17mの飛行距離を有しており, 世界最高の質量分解能と質量精度を誇るMALDI-TOFMSシステムである。SpiralTOF™を用いたMALDI-Imagingでは, 高質量分解能により同じ整数質量をもつが小数点以下の質量が異なる化合物(アイソバリックな化合物)の分離により明瞭な化合物の分布を描画することができる。一方で高質量分解能のMALDI-Imaging解析を行う上では一般的なソフトウェア(たとえばBiomap)では, いくつかの課題がある。
- 1) マスイメージのデータサイズが増加し, データのハンドリングが難しくなる。
- 2) 高質量分離能によりアイソバリックな化合物の分離が可能となり, 有効なピーク数が増加し, 手作業ではマスイメージの抽出が困難となる。
- 3) 2)で分離したピークがサンプル由来かマトリックスや試料表面の夾雑物由来かはマスイメージを 描画するまで判別できない。
- 4) 3)の識別のため, 多数のマスイメージを俯瞰できる機能がない。
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