SpiralTOF™ リニアTOFオプションを用いたタンパク質の測定
MSTips No.227 日本電子株式会社 MS事業ユニット
JMS-S3000は、総飛行距離17mを実現し、世界最高質量分解能を誇るマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOFMS)である。しかし、イオンの寿命が比較的短く、飛行中に自発的開裂を起こすイオン(ポストソース分解イオン)は、SpiralTOF™やリフレクトロンTOFMSでは測定が困難となる。このような場合、イオン源から検出器まで直線的に飛行させるリニアTOFMSによる分析が有効になる。本報告では、JMS-S3000のリニアTOFオプションを使用したインタクトなタンパク質の高感度測定例を報告する。
実験
タンパク質の標準品は、Sigma-Aldrich社より購入した。
a. Pepsin (porcine gastric mucosa)、P-6887
b. Albumin (bovine serum)、A8471
c. Conalbumin (chicken egg white)、C0755
d. IgG (bovine serum)、I5506
タンパク質の標準品は、1pmol/μLの水溶液とした。マトリックスにはシナピン酸を用い、0.1% トリフルオロ酢酸水溶液/50%アセトニトリルに溶解した。最後に、タンパク質溶液とマトリックス溶液を等量混合し、0.5 μLをターゲットプレートに滴下したので、ターゲットプレート上のタンパク質は250fmolである。
【Fig.1 JMS-S3000 SpiralTOF with Linear TOF option.】
結果および考察
リニアTOFオプションで測定したマススペクトルをFig.2に示す。すべてのタンパク質について、それぞれの分子量に相当する1価および2価のイオンが観測された。
【Fig.2 MALDI mass spectra of protein standard】
(a) Pepsin (porcine gastric mucosa)、(b) Albumin (bovine serum)、(c) Conalbumin (chicken egg white)and (d) IgG (bovine serum).
まとめ
250fmolのタンパク質についてS/Nの良いマススペクトルを取得できた。リニアTOFオプションを用いることで、MALDIでイオン化できる高分子量イオン(分子量50万まで)を高感度で測定することが可能である。
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