TG-MS法によるギ酸ナトリウムの分析
MSTips No.252
概要
熱重量分析(Thermogravimetry: TG)は加熱による測定試料の重量変化を測定する手法である。TG-MS法ではTGにおける発生ガスを質量分析計(MS)に導入し、その定性解析を行う。今回はNETZSCH社製 熱重量示差熱同時分析装置 STA 2500 Regulusと日本電子製 四重極型質量分析計JMS-Q1500GCを用い、ギ酸ナトリウム分析を行ったので紹介する。
実験
測定試料にはギ酸ナトリウムを使用し、電子天秤にて20mgを秤量した。装置の測定条件をTable1に示す。He中のH2を測定するため、MSのイオン化エネルギーはHeはイオン化できないが、H2はイオン化できる17eVに設定した。
Table 1. Measurement conditions of HS-GC-MS
TG | |
---|---|
Furnace temp. | 60°C→20°C/min→1000°C |
Transfer line temp. | 350°C |
Atmosphere gas flow | He, 100mL/min |
Split ratio | 100:1 |
GC | |
Oven temp. | 350°C |
Column | Blank tube 5m x 0.25mm i.d. |
MS | |
Ion source temp. | 250°C |
Interface temp. | 300°C |
Ionization mode | EI, 17eV |
Ionization current | 30μA |
Relative EM voltage | +200V |
Measurement mode | Scan |
Scan range | m/z 2~100 |
結果
ギ酸ナトリウム20mgの測定結果をFigure1に示す。緑色はTG曲線(=重量変化)、青色はDTA曲線(=発熱反応)、赤色はTICクロマトグラムを表す。260°C付近の吸熱反応はギ酸ナトリウムの融解(融点253°C)によるものである。430°C、570°C付近で重量変化と相関のあるTICクロマトグラムのピークが検出された。

Figure1. TG /DTA curves and TIC chromatogram of Sodium formate
TICクロマトグラムおよびm/z 2、28、44のEICをFigure2に示す。

Temperature
Figure2. TIC chromatogram and EIC of Sodium formate
ピークA、BのマススペクトルをFigure3に示す。AはH2、CO、CO2を、BはCO、CO2を含むと推測される。

Figure3. Mass spectra of peak A and B
ギ酸ナトリウムの熱分解反応は以下の通りであり[1]、上記の測定結果はこれに合致することが確認できた。
- ピークA:
2HCOONa → H2 + CO + Na2CO3, H2 + Na2C2O4
2CO → CO2 + C - ピークB:
Na2C2O4 → CO + Na2CO3
2CO → CO2 + C
参考文献
[1] 完戸俊介、増田芳男、日本化学会誌, No.1, P.66~70(1976)
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