SRM測定メソッド作成を支援するSRM化合物データファイルの紹介
MSTips No.321
概要
食品中残留農薬の一斉分析を行う場合、化合物ごとに設定すべき項目が多く、新規に測定条件を作成する場合は多くの時間を要する。
JMS-TQ4000GCでは、最適な条件でSRM (Selected Reaction Monitoring) 測定を行うための、最適なトランジションやコリジョンエネルギー(CE)を化合物ごとにまとめた「SRM化合物データファイル」を標準搭載しており、このデータファイルから測定対象成分を選択してSRM測定メソッドおよび定量解析条件を容易に作成することが可能である。現在は食品中残留農薬分析において、GC/MSによる測定が対象となる農薬成分、約400種類以上がプリインストール済みである。また、SRM化合物データファイルに未登録の化合物を新規に測定したい場合の支援機能として、対象化合物の最適なトランジションおよびCEを自動検出するための「SRM最適化ツール」を標準搭載し、データファイルに登録されていない新規化合物のSRM測定メソッド作成を強力に支援している。本稿では、「SRM化合物データファイル」および「SRM最適化ツール」を紹介する。
SRM化合物データファイル
Fig.1に示したSRM化合物データファイルに、約400成分の農薬に関する保持時間、トランジション(プリーカーサー、プロダクトの2つの選択イオンの質量数)、コリジョンエネルギー(CE)の情報が登録されている。
(保持時間は、厚生労働省の通知法「GC/MSによる農薬等の一斉試験法(農産物)」記載のGC条件に基づき、農薬名は厚生労働省の化合物表記に準拠している。)
このデータファイルから測定したい化合物名を選択してSRM測定メソッドおよび定量解析条件を容易に作成することが可能である。
なお、データファイルに登録される成分は、市販の富士フイルム和光純薬株式会社製農薬混合標準液 PL-1~13(PL-7,8を除く)に対応しており今後随時拡充を予定している。
化合物名 | R.T.[min] | 種別 | プリカーサー m/z | プロダクト m/z | CE[eV] | I/Q |
---|---|---|---|---|---|---|
Acetochlor | 17.21 | 定量 | 146 | 131 | 15 | 1 |
参照1 | 223 | 132 | 25 | 0.61 | ||
参照2 | 146 | 130 | 25 | 0.89 | ||
Acrinathrin | 23.47 | 定量 | 208 | 181 | 10 | 1 |
参照1 | 181 | 152 | 20 | 0.92 | ||
参照2 | 208 | 180 | 10 | 0.17 | ||
Aldrin | 18.35 | 定量 | 263 | 193 | 25 | 1 |
参照1 | 263 | 228 | 25 | 0.93 | ||
参照2 | 293 | 222 | 25 | 0.5 | ||
Allethrin 1 | 18.93 | 定量 | 123 | 81 | 5 | 1 |
参照1 | 123 | 95 | 10 | 0.51 | ||
参照2 | 136 | 108 | 10 | 0.45 |
Fig. 1 SRM化合物データファイル
SRM最適化ツール
「SRM化合物データファイル」に登録されていない新規化合物を定量測定したい場合に有効な機能が、「SRM最適化ツール」である。対象化合物のシングルスキャン測定結果(保持時間およびプリカーサイオン候補)を用いて、プロダクトイオンスキャンのメソッドを自動作成し、この測定結果から対象化合物のSRM測定時に最適な各種トランジションおよびCEを自動検出することが可能である。このツールを使用したSRM最適化結果の一例をFig. 2に示す。
化合物ごとにCEと各トランジションのイオン強度をプロットしたグラフが表示され、登録可能なトランジション数は最大5個まで選択できる。最適なトランジションとCEの組み合わせ結果が、各トランジションのイオン強度の順にリストアップされ、必要に応じて編集することも可能である。また、登録対象の化合物を任意に選択し、「SRM化合物データファイルへ登録」で「SRM化合物データファイル」の新規作成および既存のデータファイルへの追加登録が容易に可能である。

Fig. 2 SRM最適化ツール
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