オージェマイクロプローブJAMP-9500F(1)
JAMP-9500F は、 ショットキー型の FEG と独自の電子光学系により大電流で高空間分解能を実現したフィールドエミッションオージェマイクロプローブです。エネルギーアナライザには、静電半球型アナライザを用い、マルチチャンネル多重検出器とオージェ分析用に最適化した入射レンズにより、高感度 ・ 高エネルギー分解能のスペクトルが得られます。また、従来、分析が困難であった絶縁物の分析に対しても、中和銃を使って帯電を中和することで分析することができます。
1.はじめに
オージェマイクロプローブは、試料に電子線を照射し、試料から発生するオージェ電子のエネルギーを測定することで、表面から数 nm の深さの組成およびその化学状態を分析する表面分析装置です。オージェマイクロプローブの分析領域は、電子線のプローブ径で決まるため、高い空間分解能が得られるのが特徴です。近年、より微小な領域を分析するために、ショットキー型フィールドエミッション電子銃(FEG)を搭載した装置が主流となっています。
JAMP-9500F は、 ショットキー型の FEG と独自の電子光学系により大電流で高空間分解能を実現したフィールドエミッションオージェマイクロプローブです。エネルギーアナライザには、静電半球型アナライザを用い、マルチチャンネル多重検出器とオージェ分析用に最適化した入射レンズにより、高感度 ・ 高エネルギー分解能のスペクトルが得られます。また、従来、分析が困難であった絶縁物の分析に対しても、中和銃を使って帯電を中和することで分析することができます。
2.装置の構成

JAMP-9500F の全体構成を図 1 に示します。
装置は、(1)電子照射系、(2)エネルギーアナライザ、(3)イオンエッチング銃、(4)試料ステージ、(5)電子照射系の制御 ・ 表示部、(6)オージェ分析系の制御 ・ 表示部から構成されます。
本体部分は、ゲート弁で区切られた試料交換室と分析室の 2 室から成り、分析室はスパッタイオンポンプ(SIP)で排気され、5×10-8Pa 以下の超高真空の状態に保たれます。一方、試料交換室はターボ分子ポンプ(TMP)とロータリーポンプ(RP)で排気されます。
3.電子照射系
オージェ分析用の電子照射系としては、できるだけ小さなプローブ径で、多くの電流が得られることが必要です。
JAMP-9500F では、 ZrO/W ショットキーフィールドエミッションのエミッタとコンデンサーレンズによる電場磁場重畳型の電子銃(インレンズFEG)により,エミッタから放出される電子を効率良く集めることで,最大 200nA 以上の照射電流が得られます。
オージェ分析時の最小プローブ径は従来の 10nm から 8nm に向上しました。
図 2 は 25kV 1nA での二次電子像とそのラインプロファイルから求めたプローブ径の結果です。
図 2 二次電子像(25kV 1nA)とラインプロファイル
試料 : グラファイト上の金粒子
4.エネルギーアナライザ
静電半球型アナライザ(HSA)は、高エネルギー分解能のスペクトルが得られるのが特長で、オージェ分析でも HSA を用いることで、スペクトルの化学シフトやエネルギーロススペクトルから化学結合状態分析が可能になります。図 3 に高エネルギー分解能モードおよび高感度モードで測定した 2keV の弾性散乱ピークと銅(Cu)のオージェ電子スペクトルを示します。
図 3 弾性散乱ピークと Cu-LMM オージェ電子スペクトル