高分子ポリマーの識別
MSTips No.D020
ガスヒーター温度を450~550℃に設定し、熱分解を生じさせることにより、DARTを用いた高分子ポリマー、樹脂、接着剤などの分析を行なうことが可能である。DART分析例として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、フォノキシ樹脂、ポリスチレン、セルロースをすでに行なっている。その中からナイロン、ポリスチレン、セルロースの標準試料に対する分析例をここで示す。
DARTイオン化にはガスヒーター温度を475℃に設定したHeガスを用い、正イオン検出を行なった。樹脂は分析前の数時間、オーブン内で硬化させた。また、いくつかの樹脂試料は長い間(月あるいは年単位)に硬化したものである。マススペクトル上に検出されたイオンピークは精密質量とその同位体パターンにより元素組成を同定した。また、整数質量スペクトルはNISTフォーマットのライブラリデータベースに転送し、未知成分の同定の一助とした。
市販高分子ポリマーのマススペクトルには、可塑剤やその他の添加物に由来するとイオンが多く検出され、これが解析を複雑にする要因となる。しかしながら、飲料用プラスチックボトルに使用されているポリエチレンやポリエチレンテレフタレート、CDケースや質量分析用フィラメントの格納している箱に使用されているポリスチレンを同定することが可能であった。

図1 ナイロン12(ポリラウリルラクタム)の分析

図2 ポリスチレンビーズ(平均分子量:~240,000)の分析

図3 綿繊維の分析:セルロース由来のイオンを検出(水酸化アンモニウム水溶液からの蒸気により、[M+NH4]+イオンの生成を促進)
- このページの印刷用PDFはこちら。
クリックすると別ウィンドウが開きます。
PDF 46.3KB