アスベストの分析 ~TEMによる分析で、繊維一本から識別できます~
EM057
透過電子顕微鏡(以後、TEMと略します)は、高い空間分解能での形態および電子回折図形の観察と、エネルギー分散型X線分光法(以後、EDSと略します)による元素分析を行うことができます。以下に、Amosite、Crocidolite、Chrysotile、AnthophylliteおよびTremolite/ActinoliteのTEMによる形態観察と電子回折図形の結果およびEDSによる元素分析の結果を示します。アスベストは、その線維状の形態および電子回折、元素組成の違いによって同定することができるため、TEMを使えば、1本の繊維からアスベストを識別することができます。
アスベストの種類
石綿 asbestos |
分類 | 鉱物名 | 石綿名 | 化学式 | H | O | Si | Na | Mg | Ca | Fe |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
蛇紋石系 | クリソタイル chrysotile |
白石綿、温石綿 | Mg3Si2O5(OH)4 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
角閃石系 | アモサイト amosite |
茶石綿 | (Fe2+, Mg)7Si8O22(OH)2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
クロシドライト crocidolite |
青石綿 | Na2(Fe2+, Mg)3Fe3+2Si8O22(OH)2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
アンソフィライト#1 anthophyllite |
直閃石綿 | (Mg, Fe2+)7Si8O22(OH)2 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
トレモライト#1,2 tremolite |
透角閃石綿 | Ca2(Mg, Fe2+)5Si8O22(OH)2 | ○ | ○ | ○ | ○#2 | ○ | ○#2 | |||
アクチノライト#1,2 actinolite |
陽起石綿 | Ca2(Fe2+ ,Mg)5Si8O22(OH)2 | ○ | ○ | ○ | ○#2 | ○ | ○#2 |
#1:アンソフィライト、トレモライト、アクチノライトもアスベスト規制対象に含まれる。
#2:トレモライト、アクチノライトは、MgとFeの含有量の違いで鉱物種が異なる。
#2:トレモライト、アクチノライトは、MgとFeの含有量の違いで鉱物種が異なる。
クリソタイル Mg3Si2O5(OH)4
Chrysotile



アモサイト (Fe2+, Mg)7Si8O22(OH)2
Amosite



(C、Cu は、それぞれ試料を支えるための支持膜およびメッシュからの元素です。)
クロシドライト Na2(Fe2+, Mg)3Fe3+2Si8O22(OH)2
Crocidolite



(C、Cu は、それぞれ試料を支えるための支持膜およびメッシュからの元素です。)
アンソフィライト (Mg, Fe2+)7Si8O22(OH)2
anthophyllite



(C、Cu は、それぞれ試料を支えるための支持膜およびメッシュからの元素です。)
トレモライト /アクチノライト Ca2(Mg, Fe2+)5Si8O22(OH)2 / Ca2(Fe2+ ,Mg)5Si8O22(OH)2
Tremolite / Actinolite



(C、Cu は、それぞれ試料を支えるための支持膜およびメッシュからの元素です。)
トレモライト、アクチノライトは、MgとFeの含有量の違いで鉱物種が異なる。
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