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自動収差補正装置とCold-FEGを搭載した透過電子顕微鏡による低加速電圧原子分解能観察と分析

EM2020-06

背景・目的

近年、CNTを代表とするカーボン材料や2Dマテリアルの構造を原子レベルで観察や分析といった需要が増えてきている。しかし、これらの材料は高加速電圧で観察や分析を行うと、ノックオンダメージにより破壊されやすく、元の構造を保ったままの観察や分析が困難であることが多々ある。
低加速電圧にすることでノックオンダメージは低減されるが、電子線の波長が長くなるために、回析限界および色収差により分解能は悪化してしまう。しかし、収差補正装置と冷陰極電界放出型電子銃(Cold-FEG)を搭載した電子顕微鏡により、許容される収束角は向上し、エネルギー分解能は向上した結果、低加速電圧でも高分解能での観察や分析が可能となってきた。
そこで今回我々は、30kVという極低加速電圧で原子分解能観察や分析が行えるようになったことを報告する。

高次収差補正装置

高次収差の中でも6回非点は重要
高次収差補正装置 式

高次収差補正装置では、
五次の収差まで補正可能

200kVから30kVまでロンチグラム
のフラット領域の拡大

Fig.1 各加速電圧におけるロンチグラム

各加速電圧におけるロンチグラム

冷陰極電界放出型電子銃

電子光源は電子顕微鏡を構成する
輝度、干渉性、プローブ径、
エネルギー分解能の点で重要

ショットキー型に比べてCold型の
エネルギー分解能は通常使用で、
0.5eV以下と高く、引き出し電圧を
下げることで0.3eV以下
にすることも可能

電子減のエネルギースプレッドの向上

Fig.2 ショットキー型とCold型のエネルギー分解能の違い

ショットキー型とCold型のエネルギー分解能の違い

ロンチグラムのフラット領域の拡大、電子源のエネルギースプレッドの向上  低加速電圧での分解能向上

収束角とプローブ径の関係

Sample:Si<110> 80kV

Fig.3 異なる収束角でのSTEM-ADF像

異なる収束角でのSTEM-ADF像

単純により大きな収束角を用いても小さなプローブを得られない  色収差の影響

Fig.4 80kVと30kVでのエネルギー分解能の違いによるプローブ径のシミュレーション

80kVのエネルギー分解能 プローブ径
エネルギー分解能の向上

・プローブ径の縮小
・大きなCL Ap.を使用可能(電流量の増加)
30kVのエネルギー分解能 プローブ径
低加速になればなるほどエネルギー分解能向上が
プローブ径に大きく寄与

原子分解能観察と分析@30kV

Sample: Si<110>

Fig.5 異なるエネルギー分解能でのSTEM-ADF像

異なるエネルギー分解能でのSTEM-ADF像

Fig.6 30kVで取得したMoSe2とグラフェンのSTEM-ADF像

30kVで取得したMoSe2とグラフェンのSTEM-ADF像
どちらの試料でも六印環が明瞭に観察された

Fig.7 単層グラフェンのSTEM-ADF像とEELS分析

単層グラフェンのSTEM-ADF像とEELS分析

まとめ

Cold-FEGと高次収差補正装置により低加速電圧での分解能が大きく向上した。さらに、引き出し電圧を下げることにより、エネルギー分解能を向上させ、大きなCL Ap.を使用することで、大きな電流量を稼ぎつつ小さなプローブを得ることが出来た。
その結果、30kVという低加速でも、原子分解能観察、分析が可能であることを紹介した。さらに、単層グラフェンのEELS分析では、カーボンの結合数により、異なる場所にピークが現れることを確認した。これは、それぞの電子状態を反映していると考えられる。

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