C-FEGを有した収差補正透過電子顕微鏡によるZ方向分解能向上
EM2020-07
はじめに
近年、収差補正器の発達により、STEMにおける空間分解能は劇的に向上し、その結果、原子分解能での像観察だけでなく分析も可能になっている。しかし、我々が得られるSTEM像は三次元の試料に対して投影された二次元の情報である。
従って、平面方向の空間分解能だけでなく、深さ方向の空間分解能も向上させる必要がある。本発表では、種々の収束角でスルーフォーカス像を取得し、得られた結果からZ方向の分解能の評価および、さらなる分解能向上方法を議論した。
Z分解能評価方法
単層grapheneを用いて、スルーフォーカスのSTEM像を取得
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それぞれの画像の各ピクセルの強度の標準偏差を計算
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それぞれの画像の各ピクセルの強度の標準偏差を計算

Fig.1 スルーフォーカスで得られた単層grapheneのSTEM像

Fig.2 (a) defocus量に対して、標準偏差の値をプロットしたヒストグラム
(b) Gauss関数でフィッティングした標準偏差のヒストグラム
半値幅をZ方向分解能とする
収束角依存性Z分解能

Fig.3 異なる収束角で取得したスルーフォーカスSTEM像(a) α = 30.8 mrad、(b) α = 38.6 mrad、 (c) α = 54.2 mradと、フィッティングにより得られたZ方向分解能(d)、(e)、(f)

Fig.4 実験値と計算値のZ方向分解能比較
ΔE依存性Z分解能

Fig.5 (a)ΔE = 0.4eV、(b)ΔE = 0.5eVで取得したスルーフォーカスSTEM像

Fig.6 実験値と計算値のZ方向分解能比較
収束角が54.2mrad、ΔEが0.33eVの条件で、3nm以下のZ方向分解能を得た
まとめ
今回我々は、引き出し電圧を下げてΔEを小さくさせることでZ方向の分解能が向上することを示した。近年では、単一材料ではなく様々な原子を置換させた複合材料を対象に、透過電子顕微鏡でZ方向のスルーフォーカスSTEM像を用いた置換原子の直接観察が試みられている。
我々は本手法が、それらの手助けになることを期待している。
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