ESR(電子スピン共鳴装置)を用いた光触媒活性の評価法Ⅱ 薄膜状試料評価に便利なティッシュセルを用いたスピントラップ法
ER040009
光触媒が、光以外のエネルギーを必要としない環境にやさしい浄化材料として注目されています。水質浄化、有害ガス分解、抗菌・抗かびその他の多くの製品に利用されています。その機能は、光触媒が半導体であるため、光エネルギーにより生成する活性酸素に起因しています。極めて酸化力の強いHO・(hydroxy radical) を生成し、これによって悪臭成分等を分解するのです。
光触媒活性の評価法(既存法)
- 色素脱色法
光触媒(製品)にメチレンブルー溶液を接触させ、1時間光照射後に着色の有無を観察する方法。
専用の装置が発売されていますが、わずかな着色の差を観ることになるため、精度のよい測定をするためには繰り返し数を増やしたり、評価条件をコントロールする必要が生じると思われます。 - プラスチックバック中ガス分解法
光触媒(製品)をアセトアルデヒドガスと共に密封し、20時間光照射後に残存ガス量を測定する方法。
残存ガスの測定は、ガスクロやガス検知管で行いますが、バッグ材料や試料からのアセトアルデヒドガスの放出や、逆に吸着が起きることもあるためこうした要素を除く工夫が必要です。
より簡便で信頼性の高い、JIS, ISOにむけた性能評価試験法が関連機関で順次検討されています。
HO・をはじめとするラジカルはESRで選択的かつ高感度に測定できますが、大変寿命が短いので、水溶液中でスピントラップ剤(DMPO)により安定化して(DMPO-OH)測定します。DMPO-OHは安定なため室温で測定できます。下図に組織薄片中ラジカルを測定するセルを用いた方法を紹介します。薄い光触媒フィルムを挿入しDMPO溶液を表面に滴下してカバーグラスをつけ、セルごと装置に挿入して測定します。セルを装置にセットした状態で光照射することができますので、操作が簡単です。下図は、3種類のフィルム試料に15分光照射した場合に生成したDMPO-OH量を比較したものです。スペクトル中央部に見られた4本の信号がDMPO-OHです。各3回測定し★印の信号強度を求めたところ図中に示した結果が得られ、ブランクを含む3種類のフィルムでHO・生成量(光触媒活性)を定量化できることが示されました。