よく使われるスピントラップ剤
ER060002
活性酸素をはじめとする溶液中の短寿命ラジカルを測定する際に用いられるのが、スピントラップ剤です。スピントラップ剤自体はラジカルではありませんが、ラジカルをトラップしてNOラジカルである付加体(アダクト)を与えます。このアダクトの寿命が長いため、室温で再現性の良い測定が可能です。
ラジカル種とスピントラップ剤との組み合わせにより、各アダクトの安定性は異なります。例えばHydroxyl radical(HO・)は極めて短寿命のラジカルですが、DMPOアダクトの半減期は数時間にまで延長されます(用いる溶液の組成・温度に依存します)。
Superoxide anion radical(O2・-)のDMPOアダクトの場合は、中性の燐酸緩衝液中で1~2分です。これらの付加反応を図1に示しました。
スピントラップ剤にはニトロン系、ニトロソ系の2種類があり、ラジカル種や反応系により使い分けられています。下記に市販されている主なスピントラップ剤を示しました。
図1 スピントラップ剤DMPOとアダクト形成反応
(DMPO)

分子量:113
適用:O2・-,HO・,C-center radical
特徴:最も一般的な水溶性トラップ剤開封後は遮光して酸素を避け冷凍保存
(M4PO)

分子量:141
適用:DMPOと同様, HO・との反応速度大
特徴:Feによる変性体を生成しにくい吸湿しやすいので注意
(PBN)

分子量:177
適用:C-center radical,HO・(ビール香味判定)
特徴:比較的安定で取り扱い易いラジカルの区別はつきにくい
(DBNBS)

分子量:357
適用:C-center radical
特徴:ニトロソ系 水溶性はあまり高くない