ESR用特殊セルのご紹介 − 大口径試料管 −
ER130005
X-band 帯のマイクロ波を用いるESRは、通常外径5 mm (内径4 mm) の標準試料管を用いて測定を行います。しかし、試料中に含まれる電子スピンが少ない場合、試料量を増やして測定したい場合があります。
このような場合にお試しいただきたいのが、ここでご紹介する大口径試料管です。
本試料管は、外径10 mm (内径9 mm) であり、標準試料管の約5倍の断面積があります。従って、誘電損失が問題にならない試料を測定する場合、標準試料管よりも数倍の高感度が期待されます。
図1 大口径試料管 (左) および外径5mmの試料管 (右) 同じ高さに試料溶液を入れて測定した
図1に大口径試料管に、0.4 μM TEMPOLのベンゼン溶液を入れた写真を示しました。 (撮影のため、ガラス試験管に入れた状態の写真です)
本試料管には専用ホルダーがセットされており、これを図のように装着してキャビティに挿入します。
対照として、外径5 mmの試料管に、同じ高さの同試料を入れ、これらを測定して得られたスペクトルを、図2および図3に比較しました。
本試料管を使用の場合、共鳴周波数および中心磁場がシフトしますが、それ以外の測定条件は統一しました。
図2 大口径試料管を使用した場合のスペクトル
図3 外径5mmの試料管を使用した場合のスペクトル
図2、3に示したスペクトルから、TEMPOL信号よりも低磁場側でノイズ (N) を求め、TEMPOL信号強度 (S) からそれぞれのS/Nを算出したところ、11.5 および44.5 でした。
この結果から、大口径試料管を用いることにより約4倍の信号強度が得られることが示されました。
通常ESR測定を高感度で行うためには、積算測定や低温ユニットを用いた低温測定が有効です。しかし、誘電損失が小さい試料で充分な量がある場合には、このように大口径試料管の使用が簡便で有用な手段となります。
固体試料への適用も可能で、9 mm以下の物であれば非破壊での測定が期待できます。本試料管の活用をご検討いただいてはいかがでしょうか。