材料のESR - プラスチックの熱による劣化評価 ② -
ER160009
試料はアクリル樹脂を用いました(図1)。試料を180~200℃で加熱すると、g=2.0035にESR信号が観測されました(図2)。プラスチックには、材料の耐久性を上げるため、一般に酸化防止剤が使われています。観測されたESR信号は、g値とESR信号の線形から、フェノール系の酸化防止剤に起因するフェノキシルラジカルであると考えられます。フェノール系の酸化防止剤は、酸化されるとキノン系の化合物となり着色します。試料を加熱後に取り出すと、黄色に着色していることが確認されました(図1)。
図1. 試料の加熱前と加熱後
図2. 観測されたESR信号(200℃)
図3は、図2の信号強度Aを重量で規格化して縦軸に、加熱時間を横軸に示しています。図より、加熱時間の経過とともにESR信号強度が大きくなっていることがわかります。図より、加熱時間の経過とともにラジカル量が一定の速度で増加していく様子がわかります。加熱温度が高いほどラジカル量の増加率も高くなることがわかります。
アプリケーションノートER-160008に示すように、本試料の高温加熱で分解が始まるのは、230℃付近でしたが、それより低温でも時間をかけて加熱することにより、熱による劣化を観察することができます。このような実験を通して、長時間の熱負荷による劣化評価が期待できます。
ESRで、わかること
- 耐熱性
- ラジカル種
- 劣化の速度・度合(ラジカル量)
図3.加熱によるESR信号強度の変化