電解ESR – 支持電解質量依存性 –
ER180013
支持電解質
電解液に大きな伝導性を与えるとともに、電解電圧を有効に電極界面に印加するために、電解液には多量の支持電解質を加える必要があります。電解質としては、溶媒によく溶けること、反応物質や生成物と反応しないこと、酸化還元の起こりにくいものなどの性質を持つことが望まれます。溶媒は、目的とする反応試薬や支持電解質をよく溶かすとともに、電解時に安定であることが望まれます。電解ESRには、ヘリックスコイル形電極電解セル(ES-EL30)を使用しました。このセルに関しては、アプリケーションノート ER090001 をご参照ください。電解時間と電圧依存性に関しては、アプリケーションノート ER1800012 をご参照ください。
支持電解質量依存性
試料は、下記試薬を混合して作成しました。
- 試料:
アントラキノン 2mM - 支持電解質:
テトラプロピルアンモニウムブロミド 100、150、200、300 mM - 溶媒:
アセトニトリル
試料の電解質を調整し、電圧を1.3VかけたときのESR信号の支持電解質量依存性を観察しました(図1)。図2に各支持電解質濃度ごとのESR信号の中央の信号強度を用いて(図1のA)、縦軸にESR信号強度、横軸に電解時間を示します。図2より、電解質濃度が高いほど、液中の抵抗を小さくし、電流を流れやすくするため、短時間でラジカルの発生を確認でき、かつESR信号強度が増大していることがわかります。支持電解質300mMのときには、一次的にESR信号に変動がみられました。これは多量の支持電解質により、液中にススがたまり、一時的に電解が電極界面に印加されなくなったと考えられます。この現象は、電解質濃度が高い場合に生じる傾向があります。
図1. アントラキノンアニオンラジカルのESR信号
◆ 支持電解質を増やすことにより、ラジカル発生までの時間を短縮できます。
◆ 適度な支持電解質量と、電解を生じる下限電圧で測定を行うことにより、反応を緩やかに進行させることができます。
図2. 異なる支持電解質量でのESR信号強度の時間変化(電圧: 1.3V)
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