SEMを用いた食品中の菌の観察
MP180325-04
SEMを用いた食品中の菌の観察例を紹介します。
化学固定
水分を含んだ食品とそれに含まれる菌やカビなどの生物を同時にSEMで観察するためには試料に適切な処理を行う必要があります。 一般には化学固定法により試料作製を行います。食品や生物に含まれるタンパク質、脂質等を薬品で化学的に固定することで、できるだけ生の状態に近い構造を保持することができます。試料を摘出して洗浄した後、アルデヒドで主にタンパク質を、四酸化オスミウムで主に脂質を固定します。その後、試料中の水分をアルコール脱水し、乾燥装置にあわせた溶剤に置換した後、凍結乾燥装置や臨界点乾燥装置を用いて試料を乾燥します。さらに必要に応じて試料表面に金属等のコーティングによる導電処理を施し、SEM観察をおこないます。
図1 一般的な生物試料(含水試料)作製法
観察例
図2は、単離培養した乳酸菌です。卓上SEMで観察しました。化学固定・脱水・乾燥・導電性処理を適切に行うことにより卓上SEMでも鮮明に細菌を観察することができます。
図3は、無糖ヨーグルトです。グルタールアルデヒドによる単固定後、t-ブチルアルコールに置換して冷凍、低真空SEM内凍結乾燥を行いました。凍結乾燥後、コーティングして高真空でSEM観察しました。ヨーグルト中に生息する球菌(矢印:菌①)と桿菌(矢印:菌②)の2種類の菌が観察できました。
図2 乳酸菌
加速電圧:15kV 撮影倍率:x20,000 二次電子像
- グルタールアルデヒド・四酸化オスミウム二重固定
- アルコール(脱水)
- 酢酸イソアミルによる臨界点乾燥
- 金コーティング後、高真空モード観察
図3 ヨーグルト
加速電圧:15kV 撮影倍率:x5,000 二次電子像
- グルタールアルデヒド固定
- t-ブチルアルコール置換
- 低真空SEMの中で凍結乾燥
- 金コーティング後、高真空モード観察
低真空SEMによる食品の観察法については アプリケーションノート MP180325-01 参照
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