超広帯域デカップリング法( CHIRP(1), WURST(2) )
NM050013
近年、超広帯域のデカップリング法として、CHIRPやWURST(Wideband, Uniform Rate, and Smooth Truncation)といったAdiabaticパルスによるデカップリングが用いられています。
これらのAdiabaticパ ルスは、パルスに位相変調をかけることにより、極めて広い帯域の磁化を反転させることができます。 CHIRPやWURSTでは、パルス位相(Phase)を次式に従って変調させています。
ここで、kは帯域(Hz)/パルス幅(s)で定義される変調速度を表し、tはパルスを形成する各時間を表します。
CHIRPやWURSTでは掃引する帯域を位相変調のパラメータとして持っているので、目的とする測定条件に 合わせてパルスを作成し直す必要があります。 JNM-ECAシリーズでは、成形パルスを定義式から自動生成する ため、引数として与えるだけで必要なAdiabaticパルスが作成できます。
また、WURSTでは掃引する帯域の両端の応答を鈍くすることにより、プロファイルのエッジを滑らかにしています。 このために、出力強度にも変調をかけ、ソーセージ(ドイツ語でwurst)型のパルス波形としています。
出力強度(Amplitude)は次式によります。
このとき、‒π/2 < βt < +π/2であり、次数nは勾配の激しさを表しています。上のグラフは20次の変調で、次数 が小さいほど両端が鈍感になります。
このような超広帯域Inversionパルスを用いて、極めて広い帯域のデカップリングをおこなうことができます。
WURSTによるデカップリングでは、WURSTパルスをTyckoとPinesの方法による5 stepの位相サイクルを、 さらにMLEV4コンポジットパルスサイクルRRRR(R=SP0 SP150 SP60 SP150 SP0)としており、ひと組のデカップ リング列はパルス20個分の長さになります。 図3にデカップリングパルス幅1ms(WURSTパルス一個分の 長さ)、帯域200kHzとした時のデカップリングプロファイルを示します。 概ね150kHzがデカップリングされ ています。 このようにAdiabaticデカップリングは、非常に広い帯域をデカップルできます。
Reference
- R.Fu, and G. Bodenhausen, Chem. Phys. Lett. 245, 415(1995)., R.Fu, and G. Bodenhausen, J. Magn. Reson. A 117, 324(1995).
- E. Kupce, and R. Freeman, J. Magn. Reson. A 115, 273(1995)., E. Kupce, and R. Freeman, J. Magn. Reson. A 117, 246(1995)., E. Kupce, and R. Freeman, J. Magn. Reson. A 118, 299(1996).