調整が簡単で、高速から低速MASの下で高効率なCross Polarization法のご紹介
NM080004
NICP(Nuclear Integrated Cross Polarization)法[1]のご紹介
13C核の高感度測定を可能にするCP法は、固体NMRにおいて日常的に使用されています。CPを実現するHartmann-Hahn条件は1H核のrf強度、13C核のrf強度、試料回転速度、サンプルなどにより変化するため、測定前の条件の最適化が必要です。特に高速試料回転のもとでは、条件設定が非常にシビアになり、少し条件がずれるだけでも大幅な信号強度のロスにつながります。本アプリケーションノートでは、条件設定を大幅に緩和するNICP法をご紹介いたします。条件設定が簡単なので、ルーチン的な測定の効率を高めることができます。
パルスシーケンス
パルスシーケンスは非常に単純です。
1Hと13Cに同時にrf磁場を照射するだけです。このとき通常のCPとは異なり1Hに90度パルスがないことと1Hのオフセットをオフレゾナンス(通常100kHz程度)からオンレゾナンスに掃引することがポイントになります。これにより、90度パルス幅の調整が不要になり、なおかつスピンロック効率の向上が実現されます。
従来法との比較
グリシンのカルボキシル炭素の信号強度を1Hおよび13Cのrf磁場強度に対してプロットすることにより、従来のCP法とNICP法の効率の違いを観測しました。従来のCP法は強い信号強度が得られる条件が非常に限られており、シビアな条件設定が必要になります。それに対してNICP法では、非常に幅広い条件の下で強い信号強度が得られています。
参考文献
[1] W.K. Peng, K. Takeda, M. Kitagawa, Chem. Phys. Lett. 417 (2006) 58-62.